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魂の管理人

白い光の奔流は、始まったときと同様に唐突に終わった。

瞳を閉じていたにもかかわらず、瞼の裏にまで差し込むかのような光が唐突に切れた。

「なんだったんだ、今のは。」

ぼんやりとした視野のまま、あたりを見渡し、不意に気が付く。

先ほどまでいたはずの住み慣れた部屋ではなく、丸太で作られた、まるでログハウスのような部屋にいることに。

軽くする独特な木の匂いが鼻腔をくすぐる。あまりにも眩しい光を浴びたせいか、視野がだいぶぼやけてはいるが、すぐに見える範疇にはドアらしきものはなく、窓のみが確認できる。窓の外は暗闇になっていて見えない。

「どこだ・・ここ。」

「どこと固定するのは難しいかのう。どこでもあり、どこでもないところ、じゃ。」

「!?」

突然後ろから声が返ってきたことに驚き、振り向く。

少し離れたところで、木の椅子に爺さんが座っている。

反射的に身構える。まだぼやけている視界の中、とっさに武器になりそうなものを探す。

「ふむ、やはりここに来たものは皆同じような反応をするのう。まあ、落ち着くが良い。ワシはここでは『魂の管理人』と呼ばれておる『存在』じゃ。」

「で、その『魂の管理人』さんとやらが『俺』に何か用かい?」

まだ警戒はとかず、身構えながらも視界がなれるまでの時間稼ぎもかねて、あえて『魂の管理人』などと言うとんでもない話に乗ってみる。

「なかなか信じれはしない話とは思うのじゃがな、人は死んだらどうなるか、当然考えたことはあるじゃろ?」

「ああ、天国に行くとか転生するとかそういう話か?・・ってちょっと待て俺は死んだのか?」

「いやいや、おぬしは死んではおらんよ。人は死ねば『魂』となり、『転生』を繰り返すのじゃよ。転生先にはこの『地球』と呼ばれている星とは別の世界も沢山ある。お前さんは別の世界からの『地球』転生組みじゃ。」

まだ視界がちらついていて、うまく距離感が計れていない。突然この様な所に連れて来られたが、まだ死んではいない(この爺さんの言うことがどの程度信じられるかは別として!)という言葉に少しだけ安堵しながらも話を促す。

「で、それがいったいどうしたんだ?」

「異世界からの転生組みにとってこの『地球』と言う環境、とりわけ今の『日本』と言う環境はなぁ・・。「生きていく」ことに苦労がなさ過ぎるのじゃよ。いや、無論生きていくにはそれ相応の苦労をしていかねばならぬし、楽と言うのでは語弊がある言い方になってしまう。あくまで『ほかの世界』との平均を比べた相対的な話として、じゃがな?」

「ああまあ、医学とかが発展していない世界もあるだろうしな。でも『地球』より文明レベルが高い世界だってあるだろう?」

「ことはそういった技術だけに限った話ではないのじゃが・・・その点は本題ではない。そういった『魂』はどうしても違和感を持ってしまうのじゃよ。『魂』の概念での違和感じゃから、本来であれば解決方法はひとつしか存在せん。『魂』が『この世界に慣れ』て『定着』し、違和感がゆっくりと少なくなり、いずれ何も感じなくなる・・というものなんじゃが、この『定着』がどうしてもうまく行かない、という奴は存在するものでなぁ。」

ずいぶん視界が戻ってきた。残念ながら手の届く範疇には武器になりそうなものは存在しないようだ。見える限りでは出口らしいものは存在しないため、逃げるという選択詞は取れそうもない。

この爺さんを何とかすることができるか?武器がない以上飛び掛るか?しかし、さして運動が得意なわけでも、格闘術を特別に習ったわけでもない。素手でどの程度のことができるだろうか?。何よりここで飛び掛ったとして、状況は改善するのか?

自問しながらも、逃げれない以上、いざと言うときには選択肢が多いほうがいい。じりじりと距離をつめ、話の続きを促す。

「それで?」

「つまり、おぬしがその『定着できていない魂』のひとり、じゃよ。このままでもこの世界で生きていくことはできるじゃろうが、おぬしのような『定着できていない魂』をほかの世界の『定着できていない魂』と入れ替える、それがわしの仕事じゃよ。」

「俺がその『定着できていない魂』だったとして、どうするつもりなんだ?」

「今言ったばかりではないか。つまり、おぬし他の『定着できていない魂』と入れ替わるつもりはないか、ということじゃ。」

「!?」

「何を言ってるんだ、このジジイは、 耄碌 (もうろく) してやがるのか?と思っておるな?やはり『定着できない魂』には共通性が多いのう。」

からからと爺さんは笑う。しかし、俺はそれどころではない。考えを読まれている!?

「まあ、その性質故にこそ『定着できない』のじゃからな。色々気になっているようじゃし、そのまま飛び掛ってきてもかまわんよ。」

何もかもを見透かしたような表情で語りかけてくる。

それにだんだんとムカついて来た俺は、無造作に近づいて爺さんの手をつかもうとした・・・だが、するりと通り抜けるかのごとく掴む事ができない。まるで立体映像でも掴もうとするかのように。

「多少は信用する気になってきたか、の?」

ため息をひとつつく。

「とりあえずドッキリ番組ではなさそうだ、という程度にだかな」

VR(バーチャルリアリティ)の進化が著しい昨今ではあるが、匂いまで再現できるとは聞いた事がない。なにより、ここまで大掛かりな仕掛けを仕掛けるような相手にも心当たりはない。ここに連れて来られた経緯も明らかでない以上、一次情報源(つまり爺さん)の言うことをある程度信用するしかないだろう・・今のところは。

まだプロローグが終わらない・・・だと・・?

あらすじ詐欺状態を早急に改善したい今日この頃。

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