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閑話 学園長視点(中編)

「久しぶりじゃの」

学園長室の椅子に腰掛けながら声を掛ける。

以前はいつじゃったか。3年は前だった筈じゃが。


「だれと勘違いされてしておられますかな?」

茶目っ気たっぷりな顔で聞いてくる。

うん?、ああそうか。

「なに、ここの話は聞き取れんよ。魔術で完全に切り離しておるからな。」

「先にそれを聞いておかんとな。一応学生と言うことになっておるし。」

目の前のソファに堂々と腰掛けながら悪びれずにその男は言う。

「よくもまあ言いおるの。この学校には何度も入っておるくせに。今回は誰のお守りで来とるんじゃ?」

「おいおい、自分の学生なのに興味なさすぎるんじゃないのか?」

「どんな偉い貴族がきたところで特別扱いは出来ないしの、それじゃったら最初から知らんほうがええわい。」

やれやれ、と言う感じでその男は肩をすくめる。

「四大公爵筆頭、レスティア家の継承権12位。当代から見ると孫に当たる。それこそ眼に入れても痛くない程度にかわいがっているな。」

「ほほ、『冷徹の』とまで言われる当代が、か。」

なかなか面白いの。奴も孫には勝てないか。見知った顔を思い浮かべながら含み笑いをもらす。


「その話もぜひ聞きたいのじゃがな。」

「今は迷宮の話、ということだな。」

表情が切り替わる。話が早くて良い。

「事前に報告したとおりさ、といっても信じてはくれんのだろ?」

「ああ、そうじゃの。見に行って探ってみたが守護者は確認できんかった。迷宮都市に本物の迷宮が出来るのは確かに異例ではあるが、その守護者が倒せてもいないのに消えるなぞ信じられん。」

「とはいってもな、報告したとおりとして欲しいんだがな。」

「一つであれば異例は通る。しかし二つを超えれば疑惑となる。おぬしも知っていることじゃろ?」

そういって机においてある茶を飲む。

「ま、何事にも建前はある。・・・倒した、と言うことになると面倒だと感じた学生どもが隠しているだけのことよ。」

「あれほどの迷宮を守る守護者を?学生が?・・・それこそ冗談じゃろ?」

 どんな守護者が守っていたかは知らないが、倒せるような相手であるはずがなく、まだ生きているとして何処にいるのかを心配しておったのじゃが。

「ああ、正直に言ってワシも死を覚悟した。魔物はこれまでに見たこともない、おそらく過去に報告があがったこともない奴よ。」

「おぬしが力を貸したのか?」

「無理を言わんでくれ。ワシができたことは後ろで邪魔にならぬように隠れていただけよ。」

はぁ・・・長い長いため息を付く。確かに、こやつは戦闘を苦手としておった。

 ゆえに冒険者として身を立てるのをあきらめ、冒険者になりたいと言う偉いさんの息子等のお守りとしてしばらく見守り、冒険者としてのイロハを叩き込むような仕事をメインにしているんじゃったな。

「倒したのは確かなのか?」

念を入れる。

「確かさ。目の前で消滅したところを見たからな。」

「何故倒したと報告せんのじゃ!?」

「学生が倒した、と報告してあの迷宮難易度を勘違いされるのがいやだから、だとよ。」

「はぁ!?冗談じゃろ?」

「びっくりすることにこれが本気でな。まあ、好意的に言うなら、『倒した』と報告したあとでの色々な面倒を見据えての選択だとは思うが。」

 冗談じゃないわい。

「仮に学生が退治したとしても学園内に出来た迷宮。念には念を入れて調査するのが当然じゃぞ。」

「とはいえ、どうだろうな。学生が退治した、となれば報告を上げずに独自に処理しようと考える教諭が出ないとは限らないのでは?」

「そんなことは・・・!」

言いかけてやめる。

 そもそも迷宮が出来たのは5年放置したからだ。

 今回の教諭は若いがゆえに報告に来たが、学園迷宮の指導教諭はローテーションする。

 もし発見が今日でなかったとしたら?・・・報告しない可能性がある教諭の顔が何人か浮かぶ。

「・・・ない、とも言えぬか・・・。」

力なく座り込む。

外からの高い評価とは裏腹に、この学園の教師の質は多方面からの引き抜きにより少しずつ下がっているのが実情だ。


「それに、倒したと知れるとさらに面倒ごとが増えるのは疑いない。ここは倒していないと言う話に乗ったほうが良いと思うぜ?」

たしかに、の。そんな学生がいると知られたらさらなる引き抜きや、政治的な面倒ごとが増えるのは疑いない。

「しかし、どうやって倒したのじゃ?正直、勝てる相手ではなかったろうに。」

「最終的なとどめとしては魔法になるが、アレは『アキラ』の手柄と言って良いだろうな。タイミングを計って攻撃を集中させる、誰もが考え付くがなかなか出来ることではない。」

「ふむ・・・では、直接見てみるとするか。細かな内容は後日クライアントに報告するのと同様なのをこちらにあげて欲しい。」

「ならこちらにもアキラの能力を教えてもらえるか?」

「見えた限りで良いのであれば、な。」

さて、久しぶりに使うか。

机の中からメガネを取り出す。


『人物鑑定』の能力を持つ魔道具を。


結局更新が遅い上にまだ終わらないとか・・・orz


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