表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/74

これからどうすれば……

少しの間休憩し、ようやく立てる程度には回復した。

 皆が話せる程度には回復していることを確認し、その上でまだアスが気絶している事を確認してから、考えたことを話始める。

「皆、少しいいだろうか。我々はここのボスを倒していないことにしたいんだが・・・。」

「なんじゃと!?」

「・・・また驚いた話だな。いったいどうしたんだ」

 クルトとノーラが凄く驚いた顔をしている。他の人も驚いてはいるようだが、先ずはこの二人を説得する必要があるか。

「正直な話をしよう。まず、倒せたのは奇跡だと感じている。これには異論はないだろ?」

皆がうなずく。

「にもかかわらず、だ。俺達が倒したと聞けば他の人はどう思うだろうな?いくら俺達が奇跡だ、と言い張っても信じてはもらえないんじゃないか?」

「・・・何を心配しているんだ?」

「つまり、この先に学生でもいける、と思われてしまうことを避けたいんだよ。」

床の扉をさして言う。これが何故ここにあるのかなど疑問点は多いのだが、あれほどの魔物が守護していた扉だ。

 この先の魔物が弱いと言うことはありえないだろう。


しかし、『学生でも倒せる魔物が守護していた』と学園が考えたらどうなるだろう。

 いくら俺達がなんと言おうともだ、「1期生が全力を出せば倒せる程度ならさほど強い魔物はいない」と捉えてしまうのではないだろうか?

 ちゃんと調査に一流の冒険者をつかってくれれば良いのだが、そういったことすらせずにいきなり学生を投入する可能性はないだろうか?


いきなり学生投入、と言うのは流石にないかもしれないが、過去にこういった都市の中に迷宮が出来たケース等聞いたことがない。

 たいてい迷宮は人里から離れたところに出来るものだ。

 迷宮が発見されたことで近くに町が出来て発展したことは聞いた事があるが、町の中に『迷宮』が発生する等前代未聞だ。


 研究や調査のため、この迷宮の存在は学園としては出来るだけ公表したくないのではないだろうか?

 そうなると出来るだけ冒険者は使いたくないはずだ。

 無論、われわれが知らないだけで実際には都市に迷宮が出来るケースが存在するのかもしれないが、そうだとしてもむやみに低い評価を持たせるべきではない。


何より、だ。

「正直、俺達が倒したと報告した場合、この迷宮攻略が俺達にお鉢が回ってくるんじゃないかと言う懸念もある。」

「「「!!」」」

「もう一回あいつクラスの敵と戦えるか?3年や5年後であればともかく、今の状態で勝てるか?」

入り口であのクラスの敵と言うことは、迷宮を守るボスは最低でもアレより強いはずで、仮に6人パーティで挑むとしても、正直なところ勘弁して欲しいところだ。


「キミの主張は分かった。正直心配性すぎるのではないかと思う点もいくつかあるが、もう一度あいつクラスと戦うなんて悪夢でしかない点は悔しいが同意だ。」

「ここに挑戦するなら、もっと力をつけてからにしたいですね。」

ノーラと魔法使いが同意してくれる。

クルトに視線を転じると

「冗談じゃないわい。ワシは命が惜しい。言いたいことは分かったぞい。ならば口裏を合わせておかねばな。」


しばらく色々と話を合わせたが、咆哮による恐怖でパーティが半壊し、皆が全滅を覚悟したときに掻き消えるかのようにいなくなった、という方向で話がまとまった。


「さて、話もまとまったところで、だ。帰還の羽でいったん帰って即報告するか。そちらのほうがリアリティはあるだろう。」

「とはいえ、ここを無人にするのも良くないだろう?どちらが帰って報告した方が信じてもらえる?」

「アスも連れて帰らねばならないし、咆哮で気絶した証明としてはうちのパーティのほうが良いだろうな。なるべくすぐに連れてくるさ。」

ノーラはそういい、アスもつれて帰還の羽で帰っていった。


ずっとだまっていたシオンだが、ぼそりと聞いてくる。

「アキラはこれで良かったの・・・か?」

「うん?まあ、最善ではなかったかもしれないが、悪くはないさ。」

「それなら良いのだが・・・しかし、あの刀はどうする?」

落ちている刀を指す。

使っていた本人だ、まったく別物になっているのは一目で分かるだろうな。

「とりあえず呪われていたりはしないさ。もともとシオンのものだし、シオンが使えばいいんじゃないか?」

何より、うちのパーティでも向こうのパーティでも刀を使える人はいないしな。

「私の鑑定スキルでは判定できないのだが、分かるのか?」

意外そうに聞かれる。

うーん、どう答えたものかな。まあ、鑑定が出来ること自体は知られてもかまわないか。

「『斬り返しの刀』、スキル『斬り返し』が使えるらしい。」

「!!!」

それから、シオンを説得するのは大変だった。私の腕前では使いこなせないだのなんだのといろいろいっていたが、結局のところルカが無理やりシオンに刀を持たせる事で終わった。

 説得に時間がかかったため気づかなかったが、リーゼたちも先生の説得に手間取っていたらしい。

 先生が現場を見に来たのは結局、倒してから1時間以上は優に立ってからだった。


 半信半疑どころか、ほとんど嘘だと思っていた先生は、愕然とし慌てふためいて報告に戻った。

 それから、学園内でどのような話になったのかは分からない。

 職員がほぼ総出で押しかけて着て学生達を追い出し、早々と5番入り口は閉鎖された。

 職員達も何故こうなっているのか把握しているのは少数のようで、何か緊急のトラブルがあって学生を追い出す必要が出た、と言う程度しか認識していないようだった。


俺達には明日の朝に学園長が直接話しを聞くということになり、それまでの間は扉のことは他言無用と強く言い含められ、今日は開放された。


精神的にも肉体的にも疲れていた俺達はさっさと帰って寮で寝ることにした。


しかし、どうなのだろうな。

この選択は間違っていなかったはずだ、と強い確信にも似た思いはあるものの、正しい選択か、と言われれば違う気がする。


現時点においても目立つのはなるべく避けたいと思っているが、学園長呼び出しとなれば良くも悪くも目立つのは避けれないだろうし、明日の話がどうなるかは分からないが頭が痛いところだ。


考えて何か状況が良くなるわけでもなし、とにかくは寝るとするか・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ