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まつろわぬもの

いつの間にか1万PVを突破していました。読んでいただいた方々、本当にありがとうございます。

黒い霧の中から出てきた『ソイツ』は俺にとっては見覚えのあるモノだった。しかし、「アキラ」としては知らないし、見たこともない。

「なんだ・・こいつは・・」

シオンや向こうのパーティでも知っている人はいないようだ。

 俺にとっては、歴史の教科書やテレビ(特に時代劇)でよく見慣れている。所謂『武者鎧』だ。・・・『当世具足』と呼んだほうが正しいんだったか。高校の日本史の先生が結構詳しくて色々と話していた記憶がある。

 全体的に赤一色の鎧が滑らかに動き、2メートルはあろうかという長い太刀をすらりと抜き放つ。

 顔部分には面頬(めんぽお)と呼ばれる仮面のような顔を完全に隠す装備品がつけられていて顔は見えないが、眼の部分はむき出しになっていて爛々(らんらん)と光っている。


急に寒気が襲う。冷気のような冷たい風を感じて身を竦め(すくめ)てしまう。

 敵の流れるような動作に見入ってしまったかのように身動きする事ができない。

 敵がするすると近寄ってきて、刀が振りおろされる。それに違和感を感じることができない。このままでは真っ二つだというにもかかわらず。

『ガキーーン』

金属がぶつかり合う音で我に返る。

 ルカが盾で防いでくれていた。

「悪い、ルカ!」

何だったんだ、いったい。眼が離せなかった。ルカが受けてくれなければ命はなかっただろう。


通れよ!そう念じながら『鑑定』スキルを使う。魔物が『鑑定』できるかどうかどうかは不安だったが、調べる事はできた。


魔物名:『まつろわぬもの』 魔素:濃密(下級) 弱点(下級):火・雷 弱点(中級):神聖 スキル:『通常武器無効』『致死攻撃(下級)』『視線:思考停止(中級)』『咆哮(下級)』『武器熟練/刀(中級)』『回避熟練(中級)』


・・・正直予想以上の強さだ。


「眼を見るな!魅入られるぞ!!」

大声で注意を叫ぶ。動きを止めていた僧侶や、アスがはっとした顔で武器を構えなおす。

通常武器無効とくれば、『祝福』(状態異常に下級耐性を得る)だけでは不足だ。

「僧侶さん、『破邪の剣』はいけるか!?」

破邪の剣は神聖魔法の一つで、一時的に通常武器無効の敵にもダメージを与えれるようになる。

「リーゼよ!誰を優先する!?」

「うちの刀使いのシオンとそっちのリーダーが優先で頼む!俺には必要ない!その後は回復魔法を常に詠唱済み発動止め(キャストまち)にしておいてくれ!」

「分かったわ!」

「てめぇ、色々うるせんだよ!!!」

アスはここまで着て状況が見えていないのかよ、ホント他の人が優秀なだけに格差がひどい。

ちらりと見ると、怒りなんだろうか、顔を真っ赤にしてしまっている。

正直、この敵を倒せる気がしないにもかかわらず、こんな足手まといを抱えるのは勘弁して欲しいんだが。

「チッ、こんな奴俺が何とかしてやるぜ!『ヴォルテックス・アックス!!』」

俺の横を通りすぎて切りかかる。馬鹿か!確かに、低級の技なのに3回攻撃出来る『ヴォルテックス・アックス』は優秀だが、格上の相手に何の考えもなく当てられるはずもないだろうが!。

予想通り、2回は余裕を持った状態で避けられる。

間に合えよ!

3回目の攻撃を受け流され、切り返される。予想していたけど、当然反撃につなげて来るよな!

アスの腹部を蹴り飛ばす。

「ゲフッ!」

後ろに蹴り飛ばされるアス。さっきまでアスのいた場所を正確に一刀両断する刀。・・・ぎりぎりで間に合った。

手加減できなかったけど、死ぬよりましだと思って欲しいところだな。

突然、『まつろわぬもの』が力を溜めるかのような状態になる。

咆哮(ほうこう)がくるぞ!」

「『GYEEEEEEE』!!!」

ぎりぎり警告が間に合ったか!?ビリビリと空気そのものがゆれるかのような咆哮が響き渡る。

「ヒィィィィ!?」

アス一人だけが抵抗(レジスト)に失敗したようだ。

咆哮の効果は恐怖、恐怖は回復魔法で回復されるまで消えないのが地味に痛い・・が、リーゼはアスを回復しようとはしていない。

邪魔だからしばらくおとなしくしておいて欲しいところだな。

「クルト、どうだ!?」

向こうのリーダーが叫ぶ。

「だめじゃ!!帰還の羽も使えん!」

予想はしていたけどやはりそうか・・・。多分「倒さないとダメ」な罠だろう。

本来は帰還の羽で逃げれるようなバランスで造ってあるのだろうが、何らかの理由でボスが魔物化してしまい、それに伴って帰還の羽も無効になった、というところか?

冗談きついぜ!まったく。


ボス部屋の近くを通りかかった『誰か』に助けを求める?自分で一瞬でも浮かんだアイディアを即時に否定する。来るかもどうかもわからないのではあてにできない。

勝つビジョンがまったく浮かんでこないのだが、われわれが助かるには倒すしかない。


「避けてくださいね!『サンダー・スパーク!』」

雷魔法か!弱点魔法が使えるなら少しは勝ち目もあるか!?

5本の雷が一気にまとめて降り注ぐ。3本は回避されたが、2本は命中し、そこそこダメージを出したようだ。


「効いてるみたいだ!そのまま雷魔法で攻めてくれ!」

魔法使いに指示を出す。再度詠唱に入ったようだ。

ちらり、とシオンを見る。『破邪の剣』もかかって、溜めも終わり、いつでも発動できる状態だ。


正直、かかっているのは命だけに慎重に行きたいところだが、長引けば長引くほどこちらが不利だ。魔物は疲れないが、こちらは疲れるのだから。

短期決戦で行くしかない。


「行くぞ、シオン!」

後々何か聞かれそうだが、手札を隠したまま勝つことは難しいだろう。

懐の魔法の袋から『疾風の短刀』を取り出す。


ルカが刀を受けた瞬間を見計らい、横から切り込む。

避けられたが、浅く胴を傷つける事ができた。

ルカから俺に敵の意識が切り替わる。その瞬間

「『一刀両断!』」

まったく今まで攻撃もせず、敵の意識からそれていたシオンが切り込む。当たった!・・・と思ったのだがギリギリで避けられる。

くそ、いいタイミングだったのだが。とはいえ、敵も避けるので精一杯だったのか反撃はなかった。危ない。あれで反撃がきていたらシオンのほうが真っ二つだったかもしれないな。

しかし、この攻撃を避けられるとは思っていなかった。敵がシオンを無視するようにルカと俺と、あとアスも利用して意図してやっていたのだが・・・そう甘くはいかない、ということか。


「もう一度仕切りなおしてやるしかないな。シオン、いけるか!?」

「行くしかないだろう!ノーラ!!二段突きをこっちのタイミングに合わせてくれ!」

「分かった!」

ルカが『まつろわぬもの』の前に立ち、陣形を取り直す。

「次で決めるぞ!」

難しいだろう事は分かっているが、そういって皆を鼓舞する。さて、うまく行けばよいんだが・・。


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