学園迷宮探索(初日)
回復薬をようやく買い揃えて自分の部屋に戻る。
今日は色々あった一日だったな。しかし、結局あの魔素不足は何だったのだろうか?
調べる手段がないものの、シオンの不意打ちを防げたりと実際の能力に何か影響があったのか?「明らかに何かあった」にもかかわらず、「調べる方法がない」のは少し気味が悪いな。
もう一つは「索敵」である。
特別に新しい発見であるとは思っていないのだが、なぜ利用している人がいないのだろうか?学生が利用していないのは知らないからだとしても、一代爵を取れるような冒険者が祖父にいるのにシオンが知らないと言うのも変な話だ。
・・・確かに思い返してみれば、この世界での教育はまず「スキルありき」であり、スキルをうまく利用するための色々は教えてくれるが、パーティとしての戦い方についてはほとんど言及はされてこなかった。
しかし、触られていないとはいえ、ここは学園都市なのだ。
過去の有名なパーティなどがその戦い方含め書籍になっていても不思議はないはず。
今度図書館にでも行って調べてみるか。
そんなことを考えながらも、ふと気が付くと翌日になっていた。いつの間にか寝てしまっていたらしい。
時間ぎりぎりだったので、慌てて講堂に向かう。講堂の入り口でパーティリーダーであることを確認され、羽の形をしたアイテムを貰う。
講堂での話は昨日シオンから聞いたのとほとんど同じであり、あとはパーティを離脱した場合は訓練場に登録すること等、正直いまさらな話ばかりだった。
貰ったアイテムは「帰還の羽」と言うアイテムで、使えばパーティ全員が強制的に迷宮入り口に転移すると言う魔法のアイテムとのこと。
パーティに一つくばられ、パーティポイントで購入も出来るが、1000ポイントになるとの事だ。
シオン曰く1000は結構痛い数値のようだ。
改めて説明があったが、学園迷宮では死ぬことはない。
学園迷宮で召還されているモンスターは「止めを刺す」と言う行動を行わないためで、パーティ全員が気絶したところで攻撃を行わなくなる。
パーティが全滅すると、ペナルティとして1週間迷宮に入れなくなる。
そのペナルティをとるか、それともポイントを消費してでも撤退するかの判断が求められる、ということか。学園迷宮だからこれで済むが実際は全滅したら死ぬわけで、1週間のペナルティと言うのはやや甘い気もするけどな。
まあ、撤退すべき「場所」を見極めるのも冒険者としてのスキルのうちと言うことか。
迷宮の入り口は今回も8つ、入り口の場所だけ説明があって解散となる。
やはり初日は先ず迷宮に行って見ようというパーティが多いようで、とりあえず講堂から一番近い入り口に向かうパーティが多いようだ。
「ここから一番遠いのは・・中庭近くの5番入り口か。近場は込んでそうだし、今日はとりあえずそこに行ってみるか?」
「ああ、異論はない。敵が強そうならまた別の入り口を探せばいいだけだしな。」
「(コクコク)」
混んでなさそうな遠い入り口に向かうパーティは確かに少数派のようではあったが、それでも10~15程度のパーティと一緒に中庭に向かう。
途中、5パーティほどが走り始め、我先に向かっていく。
シオンがこちらを見るが、
「ま、ここで疲れることもないだろ。早く入ったところでそこまでのメリットもないだろうし。」
学園側が一つの入り口につきどの程度のパーティ数を想定しているのかは分からないが、何年も迷宮を造っているわけで、そう簡単に敵が枯渇するようにはしていないだろう。
数パーティ程度で枯渇するようなら運営に問題があるとしか言いようがない。
実際、敵の強さを計る意味でも先にパーティが入ってくれているのはありがたい話だ。
強ければ撤退してくるだろうし、弱ければ敵の数が多いだろうから露払いになってちょうど良い。
ことさら他のパーティに聞かせるつもりもなかったが、聞こえたのだろう、お互いの動きを牽制するかのような空気が少しだけ下がる。
初日からぴりぴりしてるなぁ。半年間のスパンで見ないといけないのだし、初日から力を入れすぎるのも問題だろうに。
迷宮入り口には臨時の救護室が設置されている。すでにあたふたと走って行ったパーティは全部迷宮に入っているようだ。
さほどここの敵は強くないのか?そう思いつつ入っていく。
結果から言うと、「強すぎるわけではないが弱過ぎもしない」というバランスに設定された入り口のようだ。
あらかじめ編成を打ち合わせていた事と、敵の数が多いようであればなるべくそれを避けることでこのパーティでも進むことは可能なようだ。
編成を色々と試したためやや時間がかかったものの、予定通り昼にはいったん迷宮から出れた。
軽く昼食を取りながら細かな打ち合わせをする。
初日から昼に出てきているパーティは少ないようで、ほとんどはまだ迷宮の中のようだ。
今のうちに地図と倒した敵のカードをポイントに引き換えてもらうか。
敵は15体程度で、敵の強さによりポイントが変わるシステムのようだ。地図は一区画いくら、と決まっている。
地図はまだ誰もポイントに引き換えていないこともあって、合計200ポイントちょっとと半日にしてはそこそこ稼げた。
地図に一言情報をつけれるらしいので、敵の強さは強くもなく弱くもなく、バランスが取れている、とだけ書いておくか。
さて、午後も頑張りますかね。
・・・結局その日は5番入り口に再度入って、午後まで迷宮に入っていた。3人で晩御飯を食べつつ、明日以降も当面はこの入り口に入ることにして、解散した。
講堂に一番近い入り口(3番入り口)は、最初は弱い敵が多く、ある程度進んだら強い敵がお出迎えという、ある意味伝統的な歓迎を他の学生の皆様は受けている模様ですw




