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01 その少女、言葉が足りず

 いつだったか、テスト数週間前の放課後。目の前で繰り広げられた点々に散らばった会話を、あたしは必死に理解しようとしていた。

 話を聞いて点を繋げ、要約してやっと「あぁ、たかに告白されたんだ」とシンプルな答え。頭の中では落ち着いて整理していても、その気付いた事実には驚きを隠せない。

 当たり前じゃないか、大きく変わったことなんてなかったはずだ。

 でもさすがに事実に気付いてしまえば、以前と違ったところなんて見えてきた。大きな部分ではない、ちょっとした変化。



「つまりは告白された、と…」

「でも断ったんだよ!」

「だろうね」


 話を聞く限り、告白されたのは結構前なようで、今になっていきなり話し出したのは、相手側が諦めていないようで意識してくるのが嫌だ、と。

 告白された本人、菅元すがもとわかなは、あたし、夢原ゆめはらあやが局長を務める図書局の局員。そしてあたしと同じクラス、また同じく局員仲間である菅元すがもとけいとの双子の妹。

 そして告白したという後輩は佐伯さえき貴稀たかき


 今はまだ開館時間であり、表でやることのないあたし達は書庫に篭って話をしていた。ここは一般閲覧スペースと2枚の扉で隔てられており、多少の会話は構わないようになっている。原則、局員以外立入禁止だが、たまに局員の身内―――つまりは親友が入り込んでいる。例として今も、この雑談の側で勉強をしているのが一人。


「それがね、夢。わかなの振り方が酷いんだよ?」


 この子はれっきとした局員で、あたしの小学生の頃からの親友、相馬そうま友里ゆり


「友里は知ってたんだ」

「まぁ、たか本人から相談受けてたし」

「受けてたの!?」

「うん。一応止めたんだよ? 告白するっていうから。わかながOK出す訳ないし。

 あ、それで。夢が知らないってこと忘れてたんだ。前も話してたことあったんだけど、夢いなかったもんね」

「初耳だよ。さっきの話を聞いて、点と点を繋げるのにエライ時間かかったわっ」


 元々、わかなの話には主語がなく、育った環境か何なのか、姉であるけいとと指示語で意志疎通をするという有り得ない状況が起きる。挙げ句の果てにはそのままの調子でこっちにまで話し掛けて来る。何故話し掛けられている方が、話されていることを1から理解しようと試み、且つその応えを導き出さねばならないのか全く以って理解できない。


「でも凄いわ、夢。よく分かったね」


 そんなに感心するなら自分の妹の語彙力、もしくは会話力を鍛えたらどうだ、とツッコミを入れたくなるが、まぁ、このユルユルな双子に何を言っても無駄な気がするので放っておく。

 「夢は堅すぎる」などと双子にはよく言われるが、これこそ均衡が保たれていると思う。これ以上この図書室に緩いキャラが現れては支障をきたすに違いない。

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