第4話 冒険者は、なぜ倒れるのか
主人公は、特別な才能もチート能力もありません。
過労で倒れかけたことがある、
どこにでもいる普通のサラリーマンです。
ブラックすぎる異世界ギルドで、
「それ、普通じゃないですよね?」と
思わず口にしてしまったら――
その世界で、
“気づいてしまう人間”は、どう扱われるのか。
昼過ぎ、ギルドがざわついた。
「おい、大丈夫か!」
受付前で、冒険者の一人が膝をついている。
外傷はない。
だが、顔色が明らかに悪い。
レイは反射的に前に出た。
「水、ありますか」
「あるが……」
「少しずつでいいです。一気に飲まないで」
言われた通りにすると、 冒険者の呼吸が徐々に落ち着いていく。
「……助かった」
「今日は、何を食べました?」
「携帯食だけだ」
レイはうなずいた。
「硬くて、栄養が偏ってます」
「それに、ダンジョンは冷えますよね」
周囲の冒険者たちが、耳を傾け始める。
「体が冷えたまま休むと、 疲労は抜けません」
「回復しないまま動けば、倒れます」
「じゃあ、どうしろってんだ」
「温かいものを持ち運べれば違います」
その時だった。
「……それなら」
フードをかぶった人物が、静かに口を開いた。
「簡易的な保温なら、できる」
薬品の匂い。 錬金術師だ。
「一定時間なら、温度を保てる容器は作れる」
レイは、その言葉を逃さなかった。
「ギルドで扱えませんか?」
「冒険者が倒れにくくなる」
「依頼の成功率も上がる」
空気が、ぴんと張りつめる。
「勝手なことを言うな」
上司の声が割り込んだ。
「誰の判断で、そんな話を進めるつもりだ」
レイは、言葉に詰まる。
(……やっぱり、言わなきゃよかったか)
だが。
「俺は欲しい」
冒険者の一人が、そう言った。
「倒れなくて済むならな」
小さな一言が、確かに流れを変え始めていた。
次回、第5話。
ギルド内の小さな改善が、少しずつ“目に見える変化”として現れ始める。
ナーミの接客、冒険者たちの反応、
そしてレイの提案に対する上司の一言――
「良かれと思ったこと」が、思わぬ方向へ転びそうな気配も。
このまま改善は進むのか、それとも――。次回も読んでいただけると嬉しいです。
※しばらくは1日〜2日に1話のペースで更新予定です。
無理のない範囲で続けていきます。
予定で、2/8 UPできたらしようと思います。
よろしくお願いいたします。




