表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元社畜、異世界転生ギルドで過労死寸前。 それでも「普通じゃない」と言わずにいられなかった  作者: naganaga


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/5

第2話 正論は短く、結果で出る

主人公は、特別な才能もチート能力もありません。

過労で倒れかけたことがある、

どこにでもいる普通のサラリーマンです。


ブラックすぎる異世界ギルドで、

「それ、普通じゃないですよね?」と

思わず口にしてしまったら――


その世界で、

“気づいてしまう人間”は、どう扱われるのか。


 五分の休憩が終わったあと、

 ナーミは自分でも驚くほど、手が動いていた。


(……あれ?)


 書類を確認し、印を付け、次の冒険者を呼ぶ。

 迷いがない。

 さっきまで、頭の奥にずっとあった重たい霧が薄れている。


「次の方、どうぞ」


 声が、自然に出た。


 列は確かに止まった。

 だが、再開してからの流れが明らかに違う。


「おい、早くなってないか?」


 近くにいた冒険者が、小声でそう言った。


 ナーミは答えなかったが、内心では同意していた。


(ミス……してない)


 依頼番号の書き間違いもない。

 報酬額の確認も一度で済む。


 ――頭が、ちゃんと働いている。


 その様子を、あの男は少し離れた場所から見ていた。


「……本当に、回ってる」


 ナーミは思わず口に出した。


「はい」


 彼は頷く。


「水を飲んで、数分座っただけです。

 それで集中力が戻るのは、普通のことです」


「でも……休憩すると、仕事が遅れるって」


 そう教えられてきた。

 ずっと。


 男は首を横に振った。


「逆です」


 短く、はっきり。


「疲れたまま続けると、

 確認を飛ばす。

 確認を飛ばすと、ミスが出る。

 ミスが出ると、やり直しで時間を失います」


 一切、無駄な言葉がなかった。


「だから――」


 男は受付台の上に積まれた書類を指さす。


「今みたいに、

 最初から正しく処理したほうが早い」


 ナーミは、返す言葉が見つからなかった。


(……正論だ)


 しかも、反論できないタイプの。


 そこへ、例の上司が戻ってきた。


「どうだ、問題は起きてないだろうな?」


 探るような目。


「……ありません」


 ナーミは、そう答えた。


「むしろ、

 午前中の処理量は昨日より多いです」


 上司は一瞬、言葉に詰まった。


「な、なんだと?」


「休憩を挟んだ分、

 書き直しが減りました」


 それは事実だった。


 上司は鼻を鳴らす。


「……たまたまだろ」


 男が、口を開いた。


「たまたまじゃありません」


 静かな声だった。


「人は疲れると、

 判断を省きます。

 受付業務でそれが起きると、

 必ずミスにつながります」


 一言、一言が短い。


「休憩と水分は、

 サボりじゃなく、

 ミス防止です」


 上司は何も言えなかった。


 結果が、目の前にあったからだ。


 上司は舌打ちし、去っていった。


 ナーミは、しばらくその場に立ち尽くしていた。


「……あの」


「はい?」


「あなた、前は何をしていたんですか?」


 男は少しだけ迷ってから、答えた。


「サラリーマンです」


「……冒険者じゃなくて?」


「はい。

 こういう事務仕事のほうが、長かったです」


 ナーミは、ふっと小さく笑った。


「変な人ですね」


「よく言われます」


 でも――

 嫌な感じは、しなかった。


 昔、

 まだ余裕があった頃の自分を、

 思い出したから。


「……ナーミです」


「え?」


「私の名前」


 彼は少し驚いたあと、頷いた。


「よろしくお願いします」


 ナーミは、思った。


(この人が来てから、

 このギルド、少し変わった)


 まだほんの少し。

 でも確実に。


 ――それは、始まりだった。

※更新は1日〜2日に1話を目安にしています。

是非今後ともよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ