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元社畜、異世界ギルドの過労を全部暴く ~気づいたことは全部言う男の業務改善録~  作者: naganaga


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第14話 整っているのに、足りないもの

主人公は特別な才能もチート能力もありません。

ただの、どこにでもいる普通のサラリーマンです。

ブラックすぎる異世界ギルドで、

「それ、普通じゃないですよね?」と

思わず口にしてしまったら、どうなるのか。



午前の説明と、午後の見学。


予定通りに進んでいるはずなのに、

レイの中には、わずかな引っかかりが残っていた。


違和感、と呼ぶほどではない。

だが、きれいに収まらない何か。


午後の作業は、変わらず静かに続いていた。


書類は流れ、処理は進む。

止まることはない。


「このあたりは、最近増えてますね」


担当職員が一枚の依頼書を差し出した。


荷馬車修繕費。


昨日も見た形式だ。


レイは受け取り、軽く目を通す。


金額は自然だ。

書式も整っている。

承認印も問題ない。


「前の月も同じ内容でしたか?」


「ええ、たしか……そのはずです」


職員は隣の一覧表をめくる。


「ああ、ありますね。似たような金額で」


レイは頷く。


それ以上は聞かない。


ただ、もう一枚だけ、過去の依頼書を見せてもらった。


大きな違いはない。


――整っている。


昼の食堂。


人は多いが、どこか落ち着いている。


レイは空いている席に腰を下ろした。


向かいに、見覚えのある顔が座る。


「あ、研修の人ですよね」


例の彼女だった。


手元には、彩りのいい弁当。


「それ……」


「自作です。栄養バランス、大事なので」


即答だった。


「豚の生姜焼きに玉ねぎ。ビタミンB1で疲労回復です。あと、こっちは乾燥キノコのスープ。旨味が出るので」


話し始めると止まらない。


「同じものばかりだと偏るんですよ。栄養も、体も」


レイは少しだけ笑う。


「なるほど」


午後に戻ると、作業は相変わらず正確だった。


速く、迷いがない。


だが、ふと手が止まる瞬間がある。


依頼書を見る。

一覧を見る。

少し考え、また動く。


レイは、机の端に並べられた書類を見た。


依頼書。

転記帳票。

一覧表。


それぞれは、きれいに繋がっている。


だが。


「失礼ですが」


担当職員が顔を上げる。


「この修繕費、見積りや領収書は……」


「ああ、それは支部で確認済みです」


間を置かず、答えが返る。


当然のように。


レイは頷く。


「そうですか」


それ以上は言わない。


食堂の会話が、ふと重なる。


同じものばかりだと、偏る。


この仕組みは、整っている。


だが、整っているものだけで回している。


確認はある。

だが、重なっていない。


信頼はある。

だが、確かめてはいない。


どこかで見ているはず。

誰かが見ているはず。


その前提が、流れの中に残り続けている。


レイは書類を元の位置に戻した。


速さはある。

正確さもある。


だが、それだけでは足りない。


食事も同じだ。


摂るだけでは足りない。

偏れば、崩れる。


整っていることと、

整っている状態を保てることは、同じではない。


窓の外は、少しだけ曇っていた。


今日一日で、結論は出ない。


だが、方向は見え始めている。


レイは静かに席を立った。


明日は、もう少し踏み込む。


その前に――


「……あのスープ、悪くなかったな」


思い出して、小さく呟く

********************

※更新は1日〜2日に1話を目安にしています。

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