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元社畜、異世界転生ギルドで過労死寸前。 それでも「普通じゃない」と言わずにいられなかった  作者: naganaga


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1/5

第1話「それ、普通に回ってないですよね?」

主人公は、特別な才能もチート能力もありません。

過労で倒れかけたことがある、

どこにでもいる普通のサラリーマンです。


ブラックすぎる異世界ギルドで、

「それ、普通じゃないですよね?」と

思わず口にしてしまったら――


その世界で、

“気づいてしまう人間”は、どう扱われるのか。


 前の職場で、俺は何も言えなかった。

 言えば面倒になる。

 言わなければ、自分が壊れる。


 結果、どっちも同じだった。


 だから次は、

 気づいたことは言うと決めていた。

 たとえ、それが異世界でもだ。


 

 冒険者ギルドの朝は、いつも騒がしい。

 依頼を受けに来る者、報告を出す者、文句を言う者。

 そのすべてを、**受付の彼女は一人でさばいていた。**


「次の方、どうぞ」


 声は落ち着いている。

 笑顔も、形だけは完璧だ。

 だが、メガネの奥の目にははっきりと疲労が溜まっていた。


(今日も、人が足りない……)


 彼女は、元々このギルドで**少し有名な受付だった**。

 手際がよく、愛想もよく、

 「美人受付嬢がいる」と噂になる程度には。


 ――それは、今よりずっと前の話だ。


 人が減り、仕事が増え、

 気づけば「できるから」という理由だけで、

 彼女一人に業務が集中していった。


「昨日の依頼、報酬が違うんだが?」

「まだか? 時間がない!」


「少々お待ちください」


 その言葉を、今日に入って何度言ったか分からない。

 書類は山積み、管理表は未整理。

 休憩? いつから取っていないのか、思い出せない。


「受付は座ってるだけだろ」

「気合で回せ」


 上司はそう言って、

 自分は上に顔を出すだけで、現場には降りてこない。


(……考えるの、やめよう)


 そうしないと、続かなかった。


 そのときだった。


「すみません」


 列の後ろから、控えめな声がした。


 振り向くと、見慣れない男が立っている。

 冒険者にしては装備が貧相で、

 どこにでもいそうな、特徴のない男。


 ――新人だ。


 戦力にならないと判断された者は、

 こうして裏方の雑務に回される。

 彼もその一人だろう。


「この受付、今ひとりですか?」


「はい。……何か問題でも?」


 業務用の笑顔で返す。

 クレームなら後回しにしたい。


 だが男は、少し首をかしげた。


「いや、その……普通に回ってないですよね?」


 一瞬、頭が真っ白になった。


「え?」


「列が伸びてますし、処理も詰まってます。

 この状態で休憩なしは、ミスが出ます」


(……やめて)


 そう思った。

 余計なことを言えば、また怒鳴られる。


「だ、大丈夫です。これは普通なので」


 反射的に、いつもの言葉が出る。


 男は困ったように眉を下げた。


「普通じゃないと思います」


 その一言が、胸に引っかかった。


 そこへ、上司の声が飛んでくる。


「おい! 何を勝手に話している!」


 彼女は身構えた。

 また、だ。


 だが男は、一歩も引かなかった。


「昨日の報告書、処理が遅れてましたよね」


「……なぜそれを」


「受付が詰まると、冒険者の出発が遅れる。

 結果、依頼の成功率が下がる。

 それ、上への説明、困りませんか?」


 上司の口が、ぴたりと止まった。


「五分、休憩を入れましょう。

 そのほうが今日中に戻せます」


 沈黙。

 周囲の視線が集まる。


「……五分だけだぞ!」


 上司はそう言い捨てて、立ち去った。


 彼女は、呆然と男を見た。


「……ありがとうございました」


「いえ」


 男は少し気まずそうに視線を逸らした。


「言うつもりはなかったんです。

 でも……前の職場と、同じだったので」


 五分後。

 頭が冴え、手が動く。

 処理速度が、はっきり違う。


(……私、まだちゃんと働ける)


 ふと、男を見る。

 彼は何事もなかったように、列の整理をしていた。


「……あの」


「はい?」


「どうして、ああいうことが言えたんですか?」


 男は少し考え、答えた。


「言えなかった後悔が、あったので」


 それだけだった。


 かつて“美人受付嬢”と呼ばれた彼女は、

 その日初めて、

 **自分がまた人として扱われた**気がした。


---




※更新は1日〜2日に1話を目安にしています。

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― 新着の感想 ―
人気出そうや!!!!!!!!! 頑張って執筆するんやで!!!!!!!! 絶対損にはならんからな!!!!!
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