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回想3 出会い

マリーダの目に映る物の輪郭はぼんやりと揺らいでいる。あの部屋を出てから緊張の限界を迎えたのか、涙がとめどなく流れてくるのだ。マリーダにつけられた侍女が、見るからに上等な絹のハンカチで涙を拭う。肩を強張らせたマリーダに、侍女は大きく戸惑っているようだった。薄手のハンカチはすぐに使い物にならなくなった。じっとりと濡れたハンカチを目元に当て、窓ガラスから光の差し込む廊下をノロノロと歩く。着慣れないドレスは重く、囚人の足枷のようであった。


これからマリーダは、「入ったこともない自分の部屋」へと案内される。


マリーダには、何がなんだか分からなかった。歩みの遅いマリーダの背中を、侍女はそっと支えて歩く。手つきも体温も温かで優しいはずなのに、断頭台へ連れて行かれでもするような心持ちだった。歩くにつれて段々と息が浅くなっていく。


豪華絢爛な廊下の曲がり角を曲がった瞬間であった。マリーダと侍女の目の前にふわりと何かが降り立った。大きな白いシーツのようなそれはスクッと立ち上がると、こちらを向いて目を見開いた。紫色の目である。


マリーダも目を見開いた。


それはー自分と寸分違わぬ女の子ーであった。ただし、手には白い蛇が握られてる。


永遠のような一瞬の邂逅が過ぎ、つんざくような侍女の悲鳴が廊下にこだました。侍女は腰を抜かして隣と正面を見る。どっちを見ても同じ顔の女の子が立っている。侍女は顔を白くし、喘ぐように早い呼吸を繰り返す。何度も立とうとしては転び、立とうとしては転びを繰り返してながら、信じられないような速さで来た道を駆け戻っていった。

遠ざかる慌ただしげな足音などいざ知らず、蛇を両手に携えた女の子は羽根のように軽い足取りでマリーダに近づいた。


「まぁ!すごい!すごいわ!わたしにそっくり!あなたお名前は?私はマリーって言うの!」


マリーと名乗ったその女の子は無邪気に目を輝かせて尋ねる。首根っこを掴まれている蛇は、赤黒い口を覗かせてシャーーーーと声を立てている。マリーダの目は女の子の顔と蛇を交互に映す。


「ま、マリぃダ」


涙で掠れた声は少し裏返ってしまった。


「まぁ!名前まで似てるのね」

女の子はそういうと目を細めて天使のように微笑んだ。

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