物語のはじまり
初投稿(再掲)ですので、拙いところも多々あると思いますが、あたたかく見ていただければと思います!よろしくお願い致します!
音を立てずに一気に世界が広がった。
空月が淡い光が照らし出すように。水面が煌めくように。たが、そこには何も無い世界が。
何も覚えていない。ここがどこかも分からない。ただ何も無い世界。
──おいで
そんな無の世界に、優しい声が響く。声を聞いた途端泣けてしまいそうなほどの感情が溢れ出す。誘われるまま手を伸ばす。
でも、いざ目の前にすると怖くなってしまって、立ち竦む。わた、しは…
─大丈夫…こわくない
また声が響く。誰の声かも分からないのに、導かれるまま、誘われるままに優しい光に包まれた。
**
───眩しい…
カーテンからこぼれ落ちる陽の光を見て、その眩しさに思わず目を瞑る。
…このあと、お決まりのセリフを叫ぶことになるとは、思いもせずに。布団を引き寄せて呑気に二度寝し始めた。
*
ふっと目を覚ました。目を覚ましたと言っても、ギリギリまで寝たいタイプだから、目は意地でも開けようとしない。いつも通り、時間を確認するためにスマホを取ろうと手を伸ばす。だが、その手は空振るばかりで中々見つけられない。いつもの場所に置いたはずなのになと思って、仕方なく伸びをしながら目を開ける。
「ふわぁ……んん?」
まず、目に飛び込んできたのは豪華な天板。細部までこだわりきった見るからに高そうな逸品物。一庶民の私はそれを見て思わずポカンと惚ける。
思わずバッと体を起こして、困惑したまま視線を彷徨わせると──
人が、いた。こんな状況にも関わらず、見惚れてしまうほどの綺麗な男の子が。
"麗しい"や"美しい"という言葉が、この子のために存在するのではないか。思わずそう思ってしまうほどの美貌を持つ男の子。寝ていてもわかる、間違いなく美少年である。そんな子がベットの横で眠っていた。
驚きすぎて、思考と呼吸が止まる。
(これは、ほんとに、どういうこと!?)
考えても答えは出てこない。とりあえず小さく深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
そして、再び男の子へと視線を移した。
じっと男の子を見つめる。これは夢なのではないかと思うほど、目の前に広がる光景は綺麗だった。
注意深く彼を見ていてふと気付く。彼の子供らしい小さな手が、血が滲みそうな程強くシーツを握りしめていることに。
その光景を見た瞬間、ドクンと不思議な感覚に襲われた。
(…知ってる……気が、する……)
不思議に思いつつ、周りを見渡してみる。
天板付きのベットに、美しい彫刻のドレッサー、綺麗に整頓された大きな本棚に大きな窓とロココ模様の重厚なカーテン、シルエットの美しいランプに、極めつけは大きく美麗なシャンデリア。ある物全てが、豪華で可愛らしい。まるで、おとぎ話のお姫様が住んでいそうなお部屋。
どうしてここに、とよく回らない頭で必死に考えていると、ベッドが微かに揺れた。見ると、男の子が身動ぎしている。
起きるのかなと思って見つめていると、長いまつ毛がふるりと揺れた。そして、ゆっくりと、開く。そして、息を呑んだ。
あまりの美しさに、時間が止まった。
見えたのは透き通った蒼色。吸い込まれてしまいそうな瞳、としか私には表現出来ないくらい綺麗な目が……
「…ねえさま?」
本来なら綺麗なソプラノなのだろう。寝起きだからか、少し掠れた低い声が聞こえた。
(…私の聞き間違えかな、いや、聞き間違えであって欲しい。寝起きだから私をお姉ちゃんと間違えちゃったんだよ、ね…?)
見つめ合った状態から10秒ほど経った。
(私的には1時間経った気分だけれど。
顔だけじゃなくて、声まで可愛いなんて最強すぎではないか…)
なんて、現実逃避していると、男の子はだんだんと目が覚めてきたのか、大きな瞳をパチパチさせる。
「ねえさまっ!!」
私のことを、そうはっきりと呼んだ。
─そして、目を潤ませながら勢い良く抱きついてきた。
(今、ハッキリと私のことを「ねえさま」って呼んだよね。え、この子私の弟なの。あれ、私にこんな小さい弟いましたっけ。全然状況が分からないけれど、役得ではある。じゃなくて!神様でも誰でもいいから、今すぐに、この状況をこと細かく説明して欲しい…お願いだから……)
「…っ……ねえさ…っ…」
私の心の声が凄まじいことなんて露知らず、私に抱きつきながら、名前も知らない綺麗な男の子は声を押し殺して泣いている。
とても苦しそうに泣く男の子に、胸が締め付けられて思わず彼の頭に手が伸びそうになって、気付く。
ほんの少しだけ冷静になってきた…ような気がする。
一回だけ、声に出して、とまでは言わない。だから、せめて心の中で言わせて!
ここはどこ?私は誰?そしてあなたも誰…!?
………冷静とは…




