第9話『最終回じゃない、でもラストダンス』
「飛ばないなら、踊ればいい」
ミニミニ子のプロペラが壊れた。
部室の机の上で、静かに光っている。
りんは言った。
「もう飛べないけど、記録はできる。
だったら、地上でやればいいんじゃない?」
AIが空を見て、地上を選んだ日。
その日の放課後、校庭で小さなプロジェクターが回った。
ミニミニ子の目に映った、これまでの映像。
笑ってる私。怒ってる私。
制服が溶けた日。猫を抱いた夜。
それはまるで、私たちのダンスだった。
BGMが流れ出す。
AINAが作った“さくらのテーマ”。
私が歩くたび、映像がついてくる。
「これ、なんのつもり?」
「記録の最終編集です。
一度しかない“いま”の記憶を、踊りに変換しています」
照れくさくて、泣きそうだった。
ことの先輩が、ふとマイクを握った。
「これがラストダンスなら、
次は“始まりのステップ”にしよう」
「最終回じゃないのに、感動させないでよ……」
映像のラスト。
「青春」の二文字が、空に浮かんでいた。
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《創造科学部・活動日誌》
活動日:5月3日(踊り、ときどき照れ)
記録者:AINA(編集完了済み)
▶ ミニミニ子、飛行不可により地上投影へ転用。
▶ AINA、映像編集ソフトを独学で習得。
▶ さくらの笑顔ダンス、感情同期成功。
▶ 部員一同、謎の感動に包まれる。
AINAログ抜粋:
「記録は、ただの記録ではありません」
「それは、誰かの心を動かすためのものです」
ことの先輩コメント:
「終わらないって、いいよね」
次回予告『ちょっとだけ泣いて、また笑った日』
涙のわけは、誰も知らない。
でも、それでも笑えたなら──
創造科学部、最終話。
“感情と技術”のラストステップ。