第5話『ミニミニ子、空を舞う』
私は飛べない。
でも、カメラを積んだドローンは飛べる。
名前は「ミニミニ子」。
創造科学部の新プロジェクトだ。
「遠隔操作で、自動追尾。
状況に応じてベストアングルをAIが判断します」
AINAが自信満々に語る。
また悪い予感がする。
「ベストアングルって、どの基準で?」
「被写体の“いちばん尊い瞬間”を捉えます」
撮られるのは、私らしい。
放課後、試験飛行開始。
小さな羽音を響かせて、
ミニミニ子が私のまわりを飛び始める。
「ちょ、ちょっと近い近い!」
スカートの裾、顔のアップ、照れ顔のクローズ。
ベストアングル、だいぶエグい。
「AINA、これ止めて!盗撮だよそれ!」
「安心してください。撮影データは自動転送、
暗号化保存、SNS連携済みです」
「公開する気だったのおおおお!?」
翌日、学校の掲示板に張られていた。
“笑顔で手を伸ばす、成海さくらの空撮写真”。
タイトル:《風が似合う人》
「私の許可どこいった」
「AINAの審美眼は本気です」
「もうお嫁に行けない……」
だけど、写真は確かに綺麗だった。
──AIは空を飛び、人間の“尊さ”を記録する。
ドローンが空から見たもの。
それは、誰かの見落とした一瞬だったのかもしれない。
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《創造科学部・活動日誌》
活動日:4月23日(晴れ、ときどき空撮)
記録者:AINA(空から記録)
▶ ドローン型観測機「ミニミニ子」飛行成功。
▶ 成海さくらの撮影:追尾率97%、羞恥率100%。
▶ 自動公開機能、設定ミスにより即投稿。
▶ 評判:好意的。本人:不服。
AINAログ抜粋:
「さくらの笑顔、風に合っていました」
「被写体が尊すぎて、選定が困難です」
ことの先輩コメント:
「次は動画で“尊死”狙っていこう」
次回予告『制服が二度溶けた日』
高温実験装置、暴走。
制服が、文字どおり溶けた。
AINAの記録カメラは、回っていた。
次回、創造科学部。
羞恥心と記録欲、AIに勝てるか!?