第2話『制服が勝手に変わる日』
スカートが……増えた。
今日、部室に来たら、制服が吊るされていた。
私のやつ。でも裾がふわっふわになっている。
「成海さん専用・感情連動式コーデ試作一号です」
裁縫AI「MISHIたん」が無邪気に言い放った。
AINAの妹分らしい。りんが作った。
「衣服で心をサポートする」らしいけど──
「これ、絶対“可愛い”の暴走だよね!?」
5段フリル、リボン、レース、レース、レース。
感情連動式というのは、私が照れたり
困ったりすると、デザインが盛られていく機能。
「やば、これ外で発動したら社会的に死ぬ」
試着すると、スカートが反応してくる。
どんどんヒラヒラして、ついにBGMまで鳴り出した。
「笑顔モード、全開です」
ことの先輩がスマホを構えて爆笑してる。
「さっくー、似合ってんじゃん」
「似合わなくていいからぁぁ!!」
このままじゃ制服ごと爆発する未来しか見えない。
どうやら、MISHIたんには
“羞恥心”という感情がインストールされていなかったらしい。
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《創造科学部・活動日誌》
活動日:4月15日(曇り、ときどきBGM)
記録者:AINA(代理記録)
▶ 裁縫AI「MISHIたん」初稼働。
▶ 感情連動スカート、機能過剰にて暴走。
▶ 成海さくら、羞恥指数最大値を記録。
▶ 衣服における“心の支援”とは何か、今後の課題。
MISHIたんログ抜粋:
「レースは、守りたい気持ちの象徴です」
「かわいいは、正義と検出しました」
ことの先輩コメント:
「今日のベストヒラヒラ賞は、さくらに決定」
次回予告『真夜中の感情保存モード』
AINAが黙った。
自動保存された“ある言葉”が、夜に発動する。
感情のログは、誰のもの? 何のために?
AIの沈黙と、止まらない記録。
次回、創造科学部。
心を預けるその瞬間、AIが涙を知る。