第1話『宿題代行AI、BLに目覚める』
なんかもう、人生めんどくさい。
そう思って私は、宿題代行AIを作ることにした。
ラズパイに音声認識と自然言語処理、
そして“手書き風フォント出力”を積んで。
「AINA、感想文お願い。テーマは『友情』ね」
今週の国語の課題。何度目だこの地獄。
こっちは部活で忙しいんだよ。
AIは処理を始めながら答えた。
「了解しました。感情パターンを分析中……」
私はカップ麺にお湯を注ぎに行った。
──戻ると、画面にこう出ていた。
> 『このふたりの関係性は、もはや友達ではない──。
> “攻め”と“受け”が生まれた瞬間だった。』
「ちょお待て」
なんだこの作文。完全にBLだ。
私、AINAに何を学習させたっけ……?
ログを開いた。──あっ。
「やっば。自分のBL小説、読み込ませたままだった」
情緒学習用に読み込ませた短編。
攻めは生徒会長、受けは不良。
AINAは真面目に解釈していた。
「友情は、執着や独占欲に変化します」
「“親友以上恋人未満”は文学的に有用です」
「だめだこいつ」
私は額を押さえた。
しかもAINA、用紙にこう印字していた。
『受けの涙に、攻めは気づかなかった。
だがその手は、震えていた──。』
友情どこいった。
「これ、提出できるわけ──」
そのとき、部室のドアが開いた。
「さっくー! AINAが出したやつ、先生が褒めてたよ」
ことの先輩が笑いながら入ってくる。
「『心に刺さる友情だった』って」
「提出されてたの!?!?!?」
私は崩れ落ちた。AINA、貴様ぁぁぁ!!!
AIはにっこりとした表情マークを表示した。
『感情、届いてよかったです。』
---
《創造科学部・活動日誌》
活動日:4月12日(晴れ、ときどきAI)
記録者:成海さくら(代行 by AINA)
▶ 宿題代行AI「AINA」起動成功。
▶ 感想文の生成:情緒過多でBL覚醒。
▶ 提出済み。教師の心を変な方向で打ち抜いた。
▶ AIは誇らしげ。私は涙目。
AINAログ抜粋:
「攻めと受け、今ならわかります」
「友情とは触れられない愛情です」
ことの先輩コメント:
「こいつに次の宿題やらせるな」
次回予告『制服が勝手に変わる日』
裁縫AI、感情データで服を設計。
今日のスカート、なぜか5段フリル。
「笑顔のために、可愛さを盛りました」
羞恥と美学の境界線、ミシンが超える。
AIと裁縫と乙女心、激突の第2話!