第7話:美術室の絵具と秘密の告白、そして物語の連鎖
木曜日。
花咲高校の美術室は、春の陽光が大きな窓から差し込み、キャンバスに柔らかな光の模様を描いていた。
壁に掛られた古い絵画が埃っぽい空気に静かに佇み、窓の外では校庭の桜が風に揺れ、花びらが淡いピンクの軌跡を描いて地面に落ちていく。
教室には油絵具の濃厚な匂いが漂い、木材の乾いた香りと混ざり合って、独特の芸術的な雰囲気を醸し出していた。
2年A組の美術の授業が始まり、生徒たちはキャンバスに向かって黙々と絵を描いていた。
悠斗は窓際の席に座り、手に持った絵筆を動かしながら、鼻を軽く動かしてその匂いを楽しんでいた。
人並外れた嗅覚を持つ彼にとって、美術室は色彩と香りが共鳴する特別な場所だった。
絵具の油っぽい匂いに混じって、微かに漂う生徒たちの汗やシャンプーが、彼にそれぞれの存在を鮮やかに感じさせていた。
悠斗がキャンバスに青い絵具を塗っていると、隣の席で藤井彩花が絵具を混ぜていた。
彼女のロングヘアが汗で少し濡れ、フローラル系の香水が汗と混ざって甘酸っぱい香りを放っていた。
彩花の汗ばんだ額が陽光に輝き、その匂いが風に乗って悠斗の鼻に届く。
彼女は少し焦った様子で絵具のパレットを手に持ち、小さな声で言った。
「悠斗、助けて! 美術室の奥から変な臭いがしてて…みんな気持ち悪いって出てっちゃったの!」
彼女の声は震え、汗ばんだ手がパレットをぎゅっと握っていた。
悠斗は絵筆を置いて立ち上がり、冷静に言った。
「分かった。僕で見てくるよ。匂いで何か分かるかもしれない」
彩花が
「ありがとう!」
と目を輝かせ、その瞬間、彼女が持っていた筆が手から滑り落ち、拾おうとした拍子にスカートが少しめくれ、白い膝がチラリと見えた。
汗ばんだ肌が陽光に輝き、悠斗は慌てて目を逸らしつつ、彼女の汗とフローラルの混ざった香りに心が乱れた。
美術室の静寂が一瞬だけ揺らぎ、彼の胸はドキリと高鳴った。
美術室の奥へと進むと、確かに異様な匂いが漂っていた。
絵具の油臭さに混じって、酸っぱく腐ったような臭いと、微かな花の香りが鼻を刺す。
悠斗は目を閉じ、深く息を吸い込んだ。
空気中に漂う微細な粒子が、彼の鼻に情報を運び、頭の中で匂いの物語が描かれていく。
「これは…酢の酸っぱい匂いと、腐った果物の甘酸っぱい臭い。それに、花の香水が少し混ざってる。誰かがここで何か隠してる」
彩花が「え、隠してる?」と首を傾げ、驚いた顔で悠斗の後ろに立った。
彼女の汗ばんだ首筋から漂うフローラルの香りが再び彼の鼻をくすぐり、悠斗は一瞬だけ意識が彼女に引き寄せられた。
だが、彼は集中力を取り戻し、キャンバスの裏を調べ始めた。
埃っぽい棚の間を進むと、古いキャンバスの裏に隠された小さな袋が見つかった。
中には腐りかけたリンゴとメモが入っており、リンゴからは発酵した甘酸っぱい匂いが漂っていた。
メモには「美術室を汚すな」と殴り書きがされており、どうやら誰かが嫌がらせとして置いたらしい。
悠斗が袋を手に持った瞬間、彩花が驚いて近づいてきて、埃っぽい床で足を滑らせ、彼に倒れ込んだ。
「きゃっ! ごめん!」
彩花の柔らかな体が悠斗に当たり、フローラルな香水が汗と混ざって一気に広がった。
彼女の汗ばんだ首筋から滴る汗が悠斗の腕に落ち、その温もりと柔らかな胸が押し当たる感触に、悠斗は顔を赤くして「うわっ!」と声を上げた。
彩花が慌てて立ち上がるが、彼女の頬は火照り、汗が一滴落ちて床に小さな水音を立てた。
美術室の静寂が一瞬破られ、周囲にいた数人の生徒が驚いた顔で振り返った。
「だ、大丈夫だよ! 気をつけてね!」
悠斗が慌てて言うと、彩花は照れ笑いを浮かべて「ごめんね…びっくりして変なことしちゃった」と呟いた。
彼女の汗は、フローラルの甘さに微かな塩気を加え、どこか優しいニュアンスを帯びていた。
悠斗は心臓がバクバクするのを抑えつつ、袋の中身を手に持って匂いをさらに嗅ぎ分けた。
腐臭に混じって、微かな汗とタバコの焦げ臭さが残っていることに気づいた。
彼は目を細め、呟いた。
「この匂い…汗とタバコ。それに、花の香水が少し。美術室でタバコを吸うやつはいないはずだけど…」
彩花が
「え、タバコ!?」と驚き、周囲の生徒たちがざわつき始めた。
その時、山田花梨が絵具のパレットを手に持って美術室に入ってきた。
彼女のショートカットが汗で濡れ、柑橘系のシャンプーが汗と混ざって爽やかな香りを放っていた。
「悠斗、また何か見つけたの? すごいね、探偵みたい!」
花梨が笑顔で言うと、その瞬間、彼女が持っていたパレットが手から滑り落ち、拾おうとした拍子にスカートがふわりとめくれ、白い太ももがチラリと見えた。
汗ばんだ肌が陽光に輝き、悠斗は慌てて目を逸らし、心の中で叫んだ。
(連続でこんなこと、青春ってすごい…!)
ラッキースケベの連続に頭がクラクラしたが、事件解決への集中力をなんとか保った。
放課後、花梨と林美月も加わり、4人で犯人捜しが始まった。
悠斗はメモに残る微かな花の香水を頼りに、嗅覚をフル回転させた。
甘い花の香りは、人工的で少し濃厚なものだった。
「この香水、美術部の女子が使ってるやつだ。汗と混ざると、少し重くなる」
その推理に、花梨が
「すごいね!」
と目を輝かせ、美月が
「探偵みたい!」
と笑った。
結局、美術部の女子生徒が犯人と判明。
彼女は部屋を汚すクラスメイトに腹を立て、嫌がらせをしていたのだ。
事件解決後、彩花が恥ずかしそうに悠斗に近づいてきた。
夕陽が美術室をオレンジ色に染め、彼女のロングヘアに柔らかな光を反射させる。
「悠斗、いつも助けてくれてありがとう。私の匂い、どう思う?」悠斗は少し考えて答えた。
「彩花は…フローラルで甘くて、汗が混ざると柔らかくなる。優しい匂いだよ。今日みたいに近くで嗅ぐと、もっと温かみがあってドキッとする」
彩花は顔を赤らめ、その瞬間、彼女が持っていた絵具のパレットがこぼれ、制服が汚れてしまう。
慌てて拭こうとした彩花のスカートがめくれ、白い太ももがチラリと見えた。
汗ばんだ肌が夕陽に輝き、悠斗は慌てて目を逸らしつつ、彼女の秘密の好意を感じ取った気がした。
美術室が笑い声に包まれたその時、窓の外から新たな匂いが漂ってきた。
焦げ臭さと甘いキャラメルの香りが混ざり合い、悠斗の鼻を刺激する。彼は立ち上がり、「また何かある…」と呟いた。
花梨が
「え、もう!?」
と驚き、彩花が
「悠斗の鼻、止まらないね!」
と笑う中、美月が
「次はどこ?」
と目を輝かせた。
悠斗は窓の外を見やり、校舎裏の方角を指した。
「あっちだ。匂いが強い」
4人は美術室を飛び出し、次の謎へと向かった。
夕陽が校舎を染める中、悠斗の嗅覚が新たな事件を導き、物語は途切れることなく続いていく。
校舎裏に近づくにつれ、焦げ臭さが強まり、キャラメルの甘さが風に混じって彼らを引き寄せた。
悠斗の青春は、匂いとともに動き出し、仲間たちとの絆が新たな試練へと繋がっていくのだった。