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第6話:プールサイドの波乱と水の香り

 春の陽光が花咲高校のプールサイドを照らし、水面に反射した光がキラキラと揺れていた。


 水曜日、新学期が始まって2週間が経ち、体育の授業がプールへと移ったこの日、校庭の桜は散り始め、風に舞う花びらが水面に浮かんでいた。


 プールサイドには生徒たちの笑い声が響き、塩素の鋭い匂いが鼻を刺す中、悠斗は水着姿で立っていた。


 更衣室から出てきたばかりの彼の肌には、春の風が心地よく触れていたが、その風に乗って微かな異臭が漂ってきた。


 塩素の匂いに混じって、汗の濃厚な香りと、どこか甘い香水のニュアンスが感じられる。


 悠斗は目を細め、鼻を軽く動かして空気を嗅ぎ分けた。


 人並外れた嗅覚を持つ彼にとって、この匂いはただの背景ではなく、何か事件の予兆を告げるものだった。

 

「これは…汗の濃い匂い。それに、甘い香水と、少し脂っぽい残り香。誰かがプールに何か落としたのか?」


 悠斗は呟きながら、プールサイドを歩き始めた。


 クラスメイトたちはすでに水に入り、泳ぎを楽しんでいる。


 水しぶきが上がり、濡れた髪や肌から漂う汗と水の混ざった匂いが、空気をさらに複雑にしていた。


 花梨がプールの中で手を振って叫んだ。


「悠斗! 泳ごうよ! こっちおいで!」


 彼女のショートカットが水に濡れ、陽光に輝く。


 柑橘系のシャンプーの香りが水と混ざり、爽やかで生き生きとした匂いを放っていた。


 悠斗は微笑みつつも、匂いの源を追うためにプールサイドを進んだ。


 すると、水面に小さなビニール袋が浮かんでいるのが目に入った。


 袋の中には溶けかけたキャンディと、手書きのメモが入っている。


 悠斗が手を伸ばして拾おうとした瞬間、花梨が勢いよく水から飛び出してきた。


「悠斗、待ってってば!」


 彼女の勢いに押され、悠斗はバランスを崩してプールに落下。


 水しぶきが上がり、花梨の濡れた体が彼にぶつかった。


 柔らかな胸が悠斗の胸に押し当たり、柑橘系のシャンプーが水と汗と混ざった爽やかな香りが一気に広がる。


 彼女の水着姿が陽光に濡れて輝き、肌から滴る水滴がプールサイドに落ちる音が響いた。


 悠斗は慌てて立ち上がり、「うわっ!」と声を上げた。


「うわっ! ご、ごめん! びっくりしただけ!」


 花梨が笑いながら謝るが、彼女の濡れた髪から滴る水と、汗ばんだ首筋から漂う柑橘の匂いに、悠斗の心臓はバクバクしていた。


 水着越しに見える彼女の柔らかな曲線が陽光に映え、ラッキースケベの瞬間がプールサイドを一気に賑やかにした。


 花梨は無邪気に笑いながら水をかけてきたが、その仕草がさらに悠斗の胸をざわつかせた。


 拾い上げたビニール袋を手に持つと、キャンディの甘い匂いが鼻をついた。


 溶けた砂糖のねっとりした香りに、微かな脂っぽさが混ざっている。


 メモには「プールを汚すな」と殴り書きがされており、またしても嫌がらせのようだった。


 悠斗は袋を手に持ったまま、周囲を見回した。


 プールサイドには生徒たちが集まり始め、ざわめきが広がる。


 彩花が水着姿で近づいてきて、フローラル系の香水が水と混ざった甘い匂いを漂わせていた。


「悠斗、また何か見つけたの? 鼻がいいってほんとすごいね!」


 彼女のロングヘアが濡れて肩に張り付き、汗と水が混ざった甘酸っぱい香りが悠斗の鼻に届く。


 その瞬間、彩花が水たまりで足を滑らせ、悠斗に倒れ込んできた。


 柔らかな体が当たり、フローラルの香りが一気に広がる。


 悠斗は慌てて彼女を支え、「大丈夫!?」と叫んだ。


「ご、ごめん! 滑っちゃって…」


 彩花が顔を赤らめて立ち上がるが、彼女の水着から滴る水滴と、汗ばんだ肌から漂う甘い匂いに、悠斗は再びクラクラした。


 連続するラッキースケベに、彼の頭は混乱状態だったが、事件解決への集中力をなんとか保った。


 袋の中身をさらに嗅ぎ分けると、キャンディの甘さに混じって、微かな汗とタバコの焦げ臭さが残っていることに気づいた。


 悠斗は目を細め、呟いた。


「この匂い…汗とタバコ。それに、甘い香水が少し。3年生の男子の中に、プールサイドでタバコを吸うやつがいるはずだ」


 花梨が


「え、タバコ!?」


 と驚き、彩花が


「気持ち悪いね…」


 と顔をしかめる中、悠斗はプールサイドに集まる生徒たちを見渡した。


 すると、3年生の男子生徒がプールサイドの隅で不自然に立ち尽くしているのが目に入った。


 彼の体からは汗とタバコの匂いが漂い、微かに甘い香水が混ざっていた。


 悠斗が近づくと、彼は目を逸らして呟いた。


「何だよ、見てんじゃねえよ」


「君、プールにこれ落としたよね? この匂い、君と同じだよ」


 悠斗が袋を見せると、彼はしぶしぶ白状した。


「プールサイドで菓子食ってるやつがムカついてさ…イタズラのつもりだっただけだよ」


 結局、彼は教師に連れていかれ、事件は解決した。


 放課後、プールサイドで花梨が笑顔で悠斗に近づいてきた。


 夕陽が水面をオレンジ色に染め、彼女の濡れた髪が風に揺れる。


「悠斗の鼻、また大活躍だね! 私の濡れた匂い、どうだった?」


 彼女の水着姿が夕陽に照らされ、汗と水が混ざった柑橘の香りが漂う。


 悠斗は少し考えて答えた。


「水と柑橘が混ざって、すごく爽やかだったよ。汗も少しあって、生き生きしてる感じがした」


 花梨は照れ笑いを浮かべ、その瞬間、彼女がタオルを巻こうとして足を滑らせ、再び悠斗に倒れ込んだ。


 濡れた体が密着し、柔らかな感触と柑橘の匂いが広がる。


 悠斗は慌てて彼女を支えつつ、目を逸らした。


「だ、大丈夫だよ! 気をつけて!」


 花梨が笑いながら立ち上がり、


「ごめんね、またやっちゃった!」


 と言う中、プールサイドは笑い声に包まれた。


 青春の波乱は解決とともにさらに深まり、悠斗の心はドキドキが止まらないままだった。



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