終章:そして誰もいなくなった
リオは世界を救った英雄として讃えられ、最強の魔法使いとして名を馳せることになった。だが、彼の勝利の代償は大きかった。彼の力を恐れた国々は次々と彼に敵対し、彼を排除しようと動き出した。
「この力が、こんなに孤独をもたらすなんて……」
彼はかつての仲間たちを敵に回し、自らを追い詰める結果となった。数多の戦いの末、彼は全ての敵対者を消し去ったが、残されたのは深い孤独だけだった。
「俺は一体、何を成し遂げたのだろうか……」
世界を救った英雄が、結局は一人きりの存在となってしまった。彼は自分を見つめ直す必要があった。そうして、彼は「リオ」という名を捨て、「ミュート」と名乗ることにした。彼は自らの声を失ったかのように、自らの存在を静かに消していく決意を固めた。
彼は空き家となった城の中で暮らすことを選んだ。かつては栄華を誇った城も、今では静寂に包まれていた。日々、魔法の力を使い、草木を育て、周囲の自然を癒やすことで、かろうじて心の平穏を保っていた。
「ここは、俺の居場所だ。誰にも干渉されることのない、ただの空間」
リオは世界を救った英雄として称賛されたが、その影には孤独と絶望が広がっていた。彼は次々と敵対する者を消し去り、ついには一人になってしまった。名をミュートと変え、静まり返った空き家となった城で暮らす日々が続いた。
「勝利の果てに、何が残ったのか……」
城の壁に耳を当てると、自分以外の気配は一切感じられなかった。彼が築いた名声や力は、彼の心を満たすことはなかった。周囲は無に帰し、彼の存在意義さえ失われていく。かつての仲間たちとの思い出は、胸を締め付けるだけの痛みとなり、彼を苦しめた。
「どれほどの血が流れ、何を失ったのか……」
彼の周りには静寂が広がり、ただ風の音だけが響く。かつての冒険の思い出は、今や彼にとっての呪いとなり、心の奥深くに重くのしかかっていた。英雄としての称号は、彼を一層孤独にさせるだけだった。
やがて彼は、日々の生活さえも面倒に感じるようになり、魔法の力すらも無駄に思えるようになった。彼は力を失ったのではなく、心を失ったのだ。ミュートとして生きることは、もうただの空虚な時間を過ごすだけで、他者との繋がりがすべて失われてしまった。
「俺は何を守ったのか。何のために戦ったのか……」
その問いに答えを見つけられず、彼はただ自らの存在を静める方法を考える。空き家の中で過ごす孤独な日々の中で、ミュートはついにその決断を下す。彼は自らの力を消し去り、静かに消えていくことを選んだ。
「これで、終わりにしよう」
そう呟くと、彼は自らの魔法を使い、全てを無に帰すことを決意した。世界から彼の存在を消し去ることで、彼は最後の孤独から解放されるつもりだった。
ミュートは静かに空き家を後にし、月明かりの下、闇に溶け込んでいった。彼の名は再び忘れ去られ、英雄としての姿はどこにも残らない。ただ、かつて一人の魔法使いがいたことだけが、静寂の中に埋もれていく。
そして、世界は彼のことを忘れ、彼の存在はただの記憶の中に消えていく。