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読んでも読まなくてもどっちでもいい

パラノイド・パラドックス

作者: 阿部千代

 青臭く、生硬。永遠のチェリーボーイ。そうだよ、おれが阿部千代だ。……いい加減もういいよな、この流れ。おれには偏執的な気質があるので、何度か繰り返したことはずっとやり続けなければいけないって思い込んでしまうのだが、よく考えてみれば、誰に望まれもせず、おれ自身も飽き飽きしていることを続ける道理はないわけだ。まあ一応、阿部千代って名前を覚えてもらえれば、読んでくれる人も増えるかなって狙いもあったにはあったが、もうどうでもいいやな、そんなことは。こういう前置きにもなってない前置きの文章を、冒頭にひとかたまり書くのがおれの癖っていうか、なんなんだろうねこれ。ルーティーン? ルーリード? セヴンティーン第二部政治少年死す? なんでもいいよ、もう。なめんなよ、ヨロシク。


 薄々と気づいちゃいたんだが、おれは物語というものの面白さがどうにも理解できないらしい。瞬間、瞬間の面白さにはフェティッシュといっていいくらいに惹かれるものがあるのだが、瞬間が積み重なった結果の大きな流れになってしまうと、どうにもピンとこなくなり、更に大きな塊としてはもう評価不能、っていうかもうどうでもいいって感じなんだが、伝わってますか? これ。

 一応、ジャンル小説であるファンタジーとかSFも大好きなんだよ。大人になってから本格的に小説読み始めたのってSF小説からだからね。ハインライン、アジモフ、ディック、ヴォネガット、ブラッドベリ、ええと他にもいっぱいいると思うけど思い出せないな。

 ファンタジーだって色々と読んだんだよ。むしろ少年時代はファンタジーこそ正義だったわけで。指輪物語とかゲド戦記とかの超定番以外で、パッと出てくるの魔法の国ザンスシリーズくらいだけどさ。あとはミヒャエル・エンデか。エンデの書く小説って、ボンクラへの愛に溢れている気がして、読んでて安心するんだよね。トー横女子とかそういう系の退廃的な少年少女に読ませてみると、案外ハマっちゃうと思うんだけどいかが思われますか。


 とまあ色々と読んできたことは読んできたんだけどね、覚えているのは些末なことばかりで結局ストーリーなんて覚えていないんだよね。覚えてないし、最初っからてんで興味がないんだよ。じゃあなんで小説なんて読んでるのって訊かれそうだけどさ、面白いから読んでるんだよな、これが。

 まず前提として、文章を読むのが好きなんだよね。新しい言葉とかさ、この言葉をこうやって使うのか、とかね。そういうことに出会うのが好きなんだよ。あとは文章でびびらされるって言うか。整合性とか論理的矛盾とか関係なしに問答無用のパワーで押し切られるみたいなね。そういう体験も好きなんですね。

 そういう意味でディックは今でも大好きだよ。細かいことなんてどうでもいいからね。このくだらない現実世界をぶっ壊してやる! っていう気合いがね。最高ですよ。

 結局のところ、おれはたぶん変わり者が好きなんだよね。ひねくれてて、気難しくて、あんまり友だちとかいない人がさ、普通の通りの良い物語なんて書いてたまるかふざけやがって! ってスタンスで書いたものが好きっていうか。愛してるっていうか。小説のジャンルで言うと、奇妙な味とかが近いんだけど、ちょっと違うんだよな。狂ってるとか、まともじゃないって感じ? わかるかな。


 話は変わるけど、って実はおれの中では変わってないんだけど、途中の繋ぎを説明するのが面倒だから、話は変わるけどって書くんだよねおれは。で、いまここ、小説家になろうの中で、おれの一番のお気に入りの人がさ、分からないな、って書くんだよ。頻出するんだよ。分からないな、って言葉が。おれもうこの言葉が出てくるだけでおかしくてさ、一応言っておくけど、まったく馬鹿にしてないからね。逆だから。その人の小説、毎日本当に楽しみにしてるから。でもこの、分からないな、っていう言葉のおかしみね。多分これ、その小説を書いている作者さんと読んでる人にしか話が通じないと思うんだけどさ、いいんだよね。分からないな、これですよ。これを入れるタイミングがさ。絶妙なんだよ。もう本当に楽しんでますよ。これ読んでるかなー。多分読んでないだろうなー。伝えたいよなーって思うけど、伝えることでその人の意識が変わってしまうのも嫌だからね。分からないな、を連発されても困るし、逆に出し惜しみされても違うしね。その人のタイミングで、書くからいいんだよね。分からないな、ってさ。いい言葉なんだよ。素直でさ、邪気がないって言うかね。

 もうおれがなにを言っているのかほとんどの人がわからないと思うんだけど、いいんだよ、おれが凄く喜んでいるってのが伝わればさ。


 おれは小説家になろうで活動している人らに色々と不満を垂れてきたけどさ、ださいことしちゃったなって思うよ。価値観なんて違っていて当たり前だからね。ディックとハインラインの友情エピソードとかもそうだもんね。細かいところは忘れちゃったけど、ディックがこんなことを言ってるんだよ。うろ覚えだけどね。


「ハインラインの書いているものは全く認めていないけれど、彼こそはこの世界の数少ない紳士で、そういう人を私は愛している」


 いい話だよな。最高にいい話だと思うよ。おれはこのエピソードを初めて目にしたとき凄く感動したんだけど、その感動をどこかに忘れてしまっていたんだよね。まあ色々とございまして、おれも足りない頭を捻って考えてね、そうだよこんなエピソードがあったじゃないかって思い出したんだ。きっともう忘れないと思うな。

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