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1話

「……僕のパーティから出て行ってくれるか?」


「なっ、俺は…俺は必死にパーティに貢献してきたじゃないか!」


 分かっている。

 そしてそれは事実であろう。


 だが、僕はあえて強い言葉で目の前の少年を貶める。


「君みたいな落ちこぼれがいては、一流の名が汚れてしまう。それに、僕たちが高みを目指せないのは、君が足手纏いであるせいなんだ。自覚、あるだろう?」


「それは…そうだけど……」


 嘘ではないが、真理ではない言葉を吐く。


 僕は少年より多くの経験をしているから、ずる賢いことを担当するのは自分の役割だと心得ている。


「なぁ、ユイ。君もそう思うだろう?コイツは身の丈にあった場所に行くべきなんだよ。」


 隣に座る、キツい印象を抱かせる少女に同意を求める。

 吊り上がった彼女の瞳には僕が映っていた。


 一度眼を伏せ、少年を見据える。


「……ええ、そうね。少なくともカイ、あなたに私たちは釣り合わない。出て行った方が身のためよ。」


 放たれた言葉は、少年の心を折るには十分すぎる威力だったはずだ。

 もちろん僕の心は傷まない。晴れ渡るような気分だし、今にも踊り出したい気分だ。


「そ…ん、な。うあ、うううあ…」


 人はショックなことが起こり、目の前で絶望が与えられると、顔中から液体を流すのだと知った。


 崩れるように、少年の両の瞳から溢れる涙と嗚咽が耳鼓を打つ。

 静かな空気を纏う絶望の色は、とても見ていられるものではなかった。


「泣き虫が!どうして私たちがのろまなアンタをパーティに入れたか、知らないわけでもないでしょう!」


 快活な笑い声が似合うはずの声が、金切り声をあげ空気を切り裂く。


「アンタはもう用無しなの!無能な引き立て役はもうお役御免なの!もう、ここにいてはいけないの!……わかったら、私の目の前からはやく消えなさい!」


 目の前の少年を見下ろすように、僕の目の前に割って入った小柄な少女はそう叫んだ。

 僕の横の少女の肩が一瞬震えた。

 僕から見える少年の次に幼いの少女の背中が、とても小さく見えた。


 声を出さずに、静かに、床に突っ伏して泣く少年の姿があまり見えなくなってしまった。


「……もう、異論が聞こえないようだ。これにて会議を終わる。カイ、荷物は纏めておいたから即刻出て行くように。」


 少しでも突き放すように。

 僕のことだけを恨んでくれたら嬉しいと、祈るような気持ちで。


 こうして僕たち……僕は、異世界からの転生者であるカイをパーティから追い出すことに成功したのであった。

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