FC ジーサス 恐怖のバイオモンスター
FCのマイナーゲームをやってみた感想文です。
これはダメです。
なんでもかんでも良い点ばかり評価してもしょうがない、実際どうなのか書かなければ意味がないと思って書きます。
このゲームはダメだと思います。
販売元はエニックス、音楽すぎやまこういち、なのに何故こんな駄作を世に出してしまったのでしょうか。汚点というか黒歴史というか、良い点が無いです。
ゲーム内容は『コマンド選択式アドベンチャー』というジャンルになっています。FC オホーツクに消ゆ の進化版のような感じで、ウィンドウ画面が大きく、途中にロールサイズのムービーが入ったりもします。
ただ、なんていうか、昔のPCゲームそのまんまな感じでFCゲームとしての面白味が全く無いです。逆に言えばPC-98時代のゲームをやってみたいと思っても今ではハードが手には入らないので、FCでそれっぽいゲームを体験出来るソフトとしては良いのかもしれませんが、ゲームとして面白いものではないです。
まず、このタイプのゲームって静止画ありきなのでムービーとかの演出も確かに大事ですが、画よりもまず何よりシナリオが大事でしょう。なのにこのゲームのストーリーは映画のエイリアンをそのまま日本語のゲームにしただけで、それをドット画の紙芝居みたい見るだけです。次の絵を見るために特定のコマンドを押さなくてはならないというだけ。最早、ただの作業です。
ストーリーは、惑星探査に行った宇宙船にエイリアンがくっ付いてきて、帰還した先の母艦の船員たちが次々に殺されて、エイリアンは排気管の中を移動していて、換気口から出入りして、ユニットごと切り離したと思っても船内に残っていて、最後に撃退して、と。細かなところまで全く映画と同じ。最後にエイリアンを撃退する方法だけFC MOTHER からパクったようで、とあるメロディを奏でるとエイリアンを倒せる仕様になっています。
当時、エイリアンとMOTHER が流行っていたから、この二つを合わせたら絶対ウケるだろうとでも思ったのでしょうか。しかし、若い世代がエイリアンもMOTHERも知らない今の時代になってみればこそ、船内にエイリアンが潜んでる緊迫感とか、死んだ仲間達が残したメロディがラスボスの弱点っていう意外な展開とかが斬新に映るものであって、当時、それを誰でも知ってるようなブームの真っ只中に二番煎じで流行り物だけ寄せ集めた話を堂々と出したって相当凄いと思います。元を知らなきゃ物凄く画期的なストーリーなので、もしかしたら、すぎやまこういちさん、エイリアンとかMOTHER とか知らなかったのかな?って思います。でなきゃ、システムもストーリーもあまりにもお粗末な、こんなゲームに音楽提供しないと思います。BGMの使われ方も本当に酷くて、ある程度長尺なメロディが付いている曲などはループになっていないため、一つの画面で選択肢に迷っていたりすると曲が終わって無音になってしまう事も多くあります。さらに少しネタバレですが、最後のエイリアン戦でキーボードを演奏するのですが、「さあ、あの場所で流れた曲を演奏するんだ」というのが最後の謎解きになり、それを音程(鍵盤)は勿論、音の長さまで間違いなく弾かないとエイリアンにやられてゲームオーバーになってしまいます。まず「何処の曲か分からない」というのと、「たぶんあの曲だろう」と分かってもそれを『ド』とか『ミ』とかテキストでタイミングまで正確に選択して演奏していくって、絶対音感でもなきゃまず無理です。攻略サイト必須。
ゲームの進行自体も、この時代の物だけあってかなり不親切というか意地の悪い仕掛けが多々あって、要は『見る』や『調べる』で、その画面(場面)内にあるトリガーとなるようなコマンドを全部開けば次のイベントが起こるというだけのシステムではあるのですが、例えば誰かと話すにしても「じゃあ、またね。」で話が終わったように見せて、もう一度話しかけると「まだ何か用?」と話が続いて、そこから3回話しが続くとか、必須アイテムがある部屋では入った途端に『とくに変わったところはなさそうだ』と表示され、それを無視して床を見たり壁を調べたりしているうちに重要なアイテムが出てきたりと、とにかくプレイヤーを惑わそうとするメッセージばかりが出てきます。
また、ゲームは大きく分けて惑星(ハレー彗星)探査船編と母艦編の二つのパートに分かれており、特に探査船編は4階+操縦階という構造でエレベーターを使って各階に移動して、各フロア内はウィザードリィみたいな十字キー操作の3Dダンジョン形式で移動になるのですが、これが非常に面倒くさい。三階のある部屋に行って部屋のPCが動かないから一階にあるコントロールルームに行ってブレーカーをONにして三階に戻ってPCの電源を入れてとか、移動も面倒だし、次に何をすれば良いのか大体の予想が付いても、それがある部屋が果たして何処にあるのか把握するだけでも凄く面倒です。
探査船編のストーリーは映画エイリアンとほぼ同じで、ハレー彗星から採取してきた鉱物を保管していた倉庫室にフェイスハガーが潜んでいて、乗組員の一人が襲われて殺されます。主人公は熱線銃でフェイスハガーを爆死させ母艦に連絡を入れますが、母艦に待機していた科学者達はエイリアンに興味津々で、死んだエイリアンの破片を持ち帰るよう指示してきます。主人公は指示通りフェイスハガーの破片をそのままに倉庫の扉を閉めて母艦へと戻ろうとしますが、しばらくすると今度は人型のエイリアンが船内に現れます。そこで主人公は今度は操縦ポットに逃げ込み、居住ユニットや倉庫ユニットなどをエイリアンごと切り離し、操縦ポットだけで母艦に帰還しました。しかし、エイリアンは宇宙空間を泳いで母艦までやってきて、母艦内に侵入してきます。
母艦編で母艦内はコマンドで行き先を選択するだけで移動できるので、探査船編よりもかなり楽というかサクサク話が進みます。
母艦では乗組員達が次々とエイリアンに殺されます。ここで映画のエイリアンとは違うというか付け足し設定があり、こっちのエイリアンは人をただ無碍に殺して廻っている訳ではなく、人のうなじ辺りに特殊な管みたいなのを刺して脊髄と脳を吸って、その生物のDNAと知識情報を吸収しているという設定になっています。この時代のゲームのストーリーにDNAっていうワードが出てくるのはちょっとだけ凄いと思いました。
DNAを搾取したエイリアンは、元の生物の遺伝情報や知識を取り込み急激に進化することが出来るようで、人型の体と吸収した学者達の知識や言語を得ていきます。
ここで一つ、このゲームが得しているというか、時代的に得している点があって、このゲームのドット画が全て当時流行のシティーポップ調な作画であるのに対してストーリーがシリアスでハードボイルドに寄っているという相反するミスマッチがやたらと精神的にチクッと刺さるんです。テイストで言えばアニメ版の『コブラ』とかに近いです。作画のテイストで言えば、わたせせいぞう とか オカモトカズマ っぽい、いかにも80年代の『ナウなヤング』な感じの作画の中で、主人公は当然のように中国人の学者女性やチリ人の女医などと体の関係を持ちながら、エイリアンの襲撃によってそんな愛人達が次々と殺されてゆく中で、最後は船長が自らの命と引き替えに主人公と一人の若い女性を脱出ポットに乗せてエイリアンから逃がして終わりという感じになります。作画とストーリーの重さがまるっきりミスマッチなのが逆に怖いんです。ムービーで、シティーポップ調の爽やかな若い男女の濃い絡みが映る場面も、エイリアンに殺された愛人が転がる場面も映し出されますが、あまりのミスマッチに逆に精神的に軽いショックを受けます。
これが80年代カルチャーの表現の怖いところで、極限まで軽くサラッと清潔に簡素化された作画表現の中に性や惨殺という最もグチャッとした現実的なものを突如ブチ込まれると、人はその対比になんともいえない嫌な感じを覚えるものです。
そういった意味でも、このゲームはお薦め出来ないというか、健全に恐怖心を煽るタイプの子ども向けゲームではないと感じました。
私的には、このゲームはハズレだと思いました。