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あの日の夏はまだ終わらない  作者: きさらぎ
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第44話 新体制

 総体が終わり、女子部は三年生が引退して一、二年生主体となった。 

 新主将に藤本愛衣(ふじもとあい)、副主将に坂井千里(さかいちさと)に決まった。レベルアップするために練習の内容も変わった。


「部室が広くなっていいわね」


 晴れ晴れとした表情で愛衣は室内を眺める。


 第一体育館は複数の部活で使うために部室棟でシャワーなど施設も共有だが、バドミントン部の部室は二階建てで単独だ。


 体育館が専用となっているために、部室も近くに設けてある。男子は反対側の別棟。室内も広く、冷暖房・シャワー室・ロッカーはもちろん、テーブルやいす・ソファ・冷蔵庫まで揃っていていたれりつくせりだ。二階にはミーティング室もある。バドミントン部だけの特別待遇だ。


「愛衣、動かないでよ」


「ああ、百合香。ごめん、ごめん」


 今、髪型を作ってもらっている最中だった。


 同じ二年生の一人が器用に櫛を動かし、髪をまとめ上げていく。目の前にはブラシやヘアアイロン・ドライヤー・ゴムやピン・リボンなど様々なヘアアイテムが揃っている。ほかにももう一人いてこちらは千里の髪型を作っていた。

 

 手先の器用さと髪を触るのが好きな部員が、愛衣の髪を整えてあげたのが始まりだった。それがいつの間にか部活前の習慣になった。

 今までは教室でやってもらっていた。目障りだった三年生がいなくなって、晴れて気兼ねなく部室を使える。


「すっごい。百合香先輩。見事ですね」


 一年生の数人が近寄ってきて、二人のにわか美容師の腕前をほめる。


「ふふ。そう?」


 まんざらでもない様子で応じる。長い髪を三つ編みにしたり、シニョンに結ったりとちょっとした遊ばせ方で雰囲気も変わる。それを心得たように次々と手を動かしていく。


「興味があるなら教えてあげるよ」


「わあ、お願いします」


 手業に感激したらしい一年生が声をあげる。


「あらあ、よかったじゃない。後継ぎができて」


「そうね。ここにはきれいどころが多いから、飾りがいがあるし、楽しいわよ。一年生までは手が回らないからどうしようかと思っていた所よ」


 女子バドミントン部は美人が多い。愛衣にしても、千里にしても美人だ。他にも何人かいる。それぞれが違う魅力を持っている。


「ありがとう」


 髪を整えた愛衣がお礼を言って、次の部員と変わる。


「ところで、さっきの部室が広くなったってどういう意味よ」


 同じように終わって席を譲った千里が先ほどの話を聞き返す。


「よっく見てよ。広くなったじゃない」


 千里は部屋をぐるりと見回す。そうしてから、やっと愛衣の言いたいこと理解する。


「なるほどね。三年生がいないから。だから部屋が広く見えるわけね」


「あたり。よかったわ。はやくいなくなってくれて」


 愛衣はこの世の春とばかりに満面の笑みを浮かべた。

 実力は二年生より下なくせにいろいろと文句をいってくる三年生が大嫌いだった。だから今回総体が終わって引退となって来なくなったから、せいせいしているのだ。 

  周りの二年生たちもくすくすと忍び笑いをもらす。みんな同じ意見なのだろう。


 この人が新しい主将か。

 はっきりとものを言う人だなと里花は思った。嫌いなタイプではない。むしろ飾らない物言いに好感がもてて、話しやすそうだ。


 緋色にとってはどうだろうか。



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