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あの日の夏はまだ終わらない  作者: きさらぎ
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第39話 翔の行動

 次の日、晃希は教室の中に入ってきた翔を見て、頭を抱えた。

顔つきが違う。鬼のような形相。完全に怒っている。一晩考えて怒りが更に増したらしい。


 教室にいた男子が気づいてさざめきがおきる。


「特進の遠野じゃねぇ?」


 ひそひそと話をしている。

 晃希は体育科で翔は特別進学科だ。校舎が分かれているので、晃希と翔も学校ではめったに会わない。翔は男子達の好奇な目も気づかない。わき目もふらず晃希の前に来た。用件は聞かなくてもわかっている。


「松嶋は?」


(しょうがないか)


「ユッキー。お客さん」


 諦めた表情で裕幸の方を見た。


 すぐ、そばにいた。

 裕幸も、じっと見ていた。が、自分とは思っていなかったので、


「おれ?」


 自分を指さしながら、緊張感のない声で答えてしまった。

 それも、気にくわなかった。いっそう顔をこわばらせる。


 裕幸の前に行くと、いきなり胸ぐらをつかんで刃物でも仕込んでいるかのような鋭い目つきで睨んだ。そして、目と目がぶつかりそうなほどの至近距離で、仄暗い氷点下の瞳が裕幸を捉える。そして、怒りを込めて言葉を放つ。


「緋色に近づくな」


 低い低いドスのきいた声だった。それから乱暴に手を離すと、教室を出て行った。

 藤と佐々と同じことを言われ、裕幸はすぐには思考が働かない。



(一応は、我慢したんだな)


 裕幸を見ると、何が何だかわからないという顔で固まっている。無理もない。本人は事情を知らない。身に覚えのない言いがかりをつけられたようなものだ。


(翔も緋色のことになると、理性が吹き飛ぶからな)




「ユッキー。お前、何やってんの?」


 すぐ後ろで見ていた龍生は、目を覆いたくなった。


(藤と佐々の次は遠野かよ。何が起こってるんだ?)


 龍生は声をかけられていた晃希を見た。彼に気づいた晃希はスッと視線を外して、手の持っていた文庫本を読み始めた。


(無視された?)


 そのあと、教室にいた男子達が裕幸のところに集まってきて、蜂の巣をつついたように騒がしくなった。そのまま話しをする機会を失ってしまった。


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