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あの日の夏はまだ終わらない  作者: きさらぎ
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第13話 乱入者たち2

 ドアが開いているため、試合は中断されたまま……二人とも試合を再開することができず、成り行きを見ていた。


「えっ……と、ごめんなさい。いえ、すみませんでした」


 はずみとはいえ扉を開け試合を中断させたことは、全面的にこちらが悪い。


 サッカー部の一人が深く頭を下げて潔く謝った。他の部員達もそれに倣って頭を下げる。そこはスポーツマンらしくということだろう。


 せっかく盛り上がっていたところに、思わぬ邪魔が入り、マネージャーとして説教の一つもしたいところだが……時間がもったいない。


「わかりました。謝罪は受けましたので、今回はこれでよしとします。そのかわり、二度目はありませんので。それから、早くドアを閉めてもらえますか? 試合を再開したいので」


 真帆は事務的に言葉を返すと、扉を閉めるように促す。

 これ以上長引かせたら、中の部員達も黙っていないかもしれない。早々に引き上げないと。


「すみませんでした」


 もう一度謝って慌てて扉を閉めた。



 グラウンドへ足を運びながら、サッカー部の一人が決まりの悪そうな顔で、口を開いた。


「まったく、マズったよな」


「ホント、誰だよ、押したの。ハズッ! 俺んとこバド部いるから、明日はなんか言われる。これをネタに絶対からかわれる」


「あー。うちンとこもだ。あいつらちょっとしたことでも大騒ぎするから、うざいよな」

 

「先輩、あそこって他の部活もやってるんすか?」


「いや、バド部専用だからな。他の部活は使わないらしい」


「へえ、すごっ! ぜいたく」


「バドミントンって、風が厳禁だから一年中締め切って練習をするらしいんだよ。だから他の部活とは一緒にできないらしい」

 

「で、専用。でも、何気に詳しいっすね」


 経験者しかわからないようなレアな情報を発した部員に、


「あっ、やっぱ、わかる? こいつさ、女子バド部に彼女いんの。しかもかわいい子」


 何気に別情報を暴露する別の部員。


「なんだよ、悪いか?」


「別に……そうだ。今度、合コン企画しろ。それで許してやる」


「……許してやるって何言ってんだか。あそこガード固いし、難しいの知ってるくせに」


「まあ、そこを何とか……彼女にうまく頼み込んでさあ」

  

「無理だ。諦めろ。今まで何回玉砕してるって思ってんだよ!」


「いやいやいや、そこをもうちょっと、彼氏の強みで、何とか……今回は桜木緋色も込みで」


「「「それ、賛成。ぜひ、彼女をお願い」」」


 合コンと桜木緋色と聞きつけた部員たちが両手を合わせながら頼み込む。


「はあ? ちっとは懲りろ!!」


「すっげぇ、女子部に拘るんすね」


 よく実情を知らない一年生が不思議そうな顔をする。


「当たり前。せっかく合コンするならかわいい子がいいじゃん? 女子バド部って美人率高いからな。なんだったら見に行ってみたらいい……って、女子部は見学禁止だったっけ?」


「そう。いつからか知んないけど。関係者以外立ち入り禁止になってる」


「見れないんすか?」


「残念ながら……」


「……」


 見れないのなら確かめようもない。


「そういえば、もうすぐランキング戦始まるよな?」


「そうそう、騒がしくなる」


「ランキング戦?」


 今度は何の話だ? 話題が次から次へと出てくる。 


「男子バド部のレギュラー戦のこと。その結果で総体のメンバーを決めるらしいんだよ」


「それで、なんで騒がしくなるんすか?」


「あの体育館には観客席があって、ランキング戦の時は解放されるから、女子が集まるんだよ」


「女子が? バドミントンっすよね?」

  

「まあな。野球やサッカーに比べたら競技としてはマイナーだけど、あそこイケメンが多いんだよ。ファンクラブもあるらしいし。人気度でいっても一番だろうなあ」


「やっぱ、顔かぁ」


「ははっ。いじけるな。あそこは顔だけじゃない、スケールが違うから。俺達みたいに全国大会出場が目標じゃなく、常に全国大会優勝が目標だから。それだけでも違うだろ?」


「はあ。そうなんスね」


「まっ、そんだけ、プレッシャーも多いかもしんないけどな。そろそろ、練習も始まるな。急ぐぞ」


 その一声にサッカー部員たちは駆け出した。


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