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「傷の部分をこちらに向けてくれ。」
俺にはもう、恐怖は無かった。
神竜はゆっくりと態勢を変え、俺の手に傷口が届くようにしてきた。
躊躇することなく、おれは薬を塗っていった。
神竜も痛みを感じるのか、最初のうちは体を激しくうねっていた。しかしそれでもおれは丁寧に薬を塗り続けた。
神竜の巨体にいくつもつけられた傷すべてに薬を塗りこむのは大変だったが、やっと治療を終えることが出来たようだ。
極度の緊張からか、それとも体を動かし続けた疲れからか。
おれは気づけば、ファルに寄りかかるようにして眠ってしまっていた。
一度も目覚めること無く、そのまま朝を迎えた。
洞窟に差し込むようにして太陽の光が辺りを照らし始めたころ、俺は目を覚ました。
ぼんやりとしていた頭がしだいにはっきりとして、そして勢い良く起き上がって、後ろを見た。
そこに神竜の姿は無かった。
夢、だったのか?
いや、夢では無かった。そこには薬草を調合した痕跡が残っていた。
未だに昨日の自分の行動が分からない。
弱り切っていた神竜であれば、セイントバードにフェアリー属性の攻撃をさせ、さらに俺が武器を手に持って弱点に直撃させれば、神竜とコネクすることも出来たかもしれないのに。
でも俺には分かる。
何度昨日をやり直そうとも、きっと俺は神竜を治療するだろう。
長年神竜のことを考え続けて、愛着でも湧いてしまったのだろうか。
そんなことを考えて苦笑いしていると、とんでもないものが目に映った。
俺が眠っていた場所のすぐ右隣に、俺より少し若いくらいの、裸の女の子が眠っていたのだ。
なんでこんな場所に裸の女の子が!?
俺はびっくりしてその子に近寄った。
すると、
「おはよ!ダーリン♪」
女の子は突然飛び起きて、俺に抱きついてきた。
あまりにも急な出来事に戸惑っていると、女の子は笑顔で俺にこう言った。
「ダーリンのお陰で元気になったよ!ありがと!」