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柚子は自雷矢の大鉄砲によって骸の左腕が落とされたのを見ている。
「?」
しかし、骸の左腕は以前と何ら変わりがなかった。
左腕に触れてみるが、薄汚れた布に巻かれた骸の太い腕は全く異常がない。
元々、怪我をしているように見える身体だが、このところずっと行動を共にしていた柚子は骸の普段の状態を把握していた。
「良かった」
柚子が言った。
心底、ほっとしていた。
骸は柚子にとって、復讐を実行してくれる無くてはならないものだ。
骸を失えば、この先どうやって鬼道信虎の首級をあげるというのか?
柚子には想像もつかない。
「無事で良かった」
何故、ちぎれたはずの骸の腕が元通りになっているのかという疑問は消え、柚子は骸に抱きついた。
柚子の腕の長さでは、とても骸の巨体には回らない。
まるで子供が大人に抱きついたようになった。
抱きついたことに、柚子自身が一番驚いていた。
どう贔屓目に見ても骸は恐ろしく醜い。




