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自雷矢の指が首を絞めてくるものへと触れた。
「!?」
腕だ。
太い腕が自雷矢の首をがっちりと捕らえているのだ。
腕には本来あるはずの身体がついていない。
肩口から先の腕だけが自雷矢の首を絞めているのだ。
自雷矢は、この腕に覚えがあった。
最初の大鉄砲でちぎり飛ばした骸の左腕である。
いつの間にまぎれたのか、忍びたちの死体の間から跳ねだしてきたのだ。
左腕自身が別の生き物のように動き、自雷矢に死をもたらそうとしている。
(何だ、これは?)
自雷矢は大虫から骸については聞いていた。
致命の傷を与えても殺せない化け物。
しかし自雷矢は疑っていた。
大虫と同じく、何らかの仕掛けがあるのではないか?
不死身など、あり得ない。
自雷矢は雲次と骸の戦いを見ていない。
細切れにされた骸がその身体を再生し、雲次を倒したことを知らないのだ。
自雷矢は今、自らの敵が本当の化け物であることを確信した。
そうでなければ説明がつかないのだ。




