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冥伝  作者: もんじろう
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 自雷矢が荷車の下から這い出た。


「終わった」


 味方の死には何の感情も湧かないらしく、淡々と呟いた。


 自雷矢の脳裏に幻斎の姿が思い出された。


 荷車に潜み、度重なる物資への襲撃を逆手にとり、現れる敵を倒せという指示を受けた。


「間違いなく柚子たちの仕業」


 幻斎は言った。


「柚子は必ず殺せ」


 幻斎の隻眼に正面から見つめられ、自雷矢は恐怖した。


 一度失敗した大虫はもちろん、もし柚子を殺せなければ自分の命も無いことを容易に想像できた。


 自雷矢は背筋がぞくりとし、そのことで現実に引き戻された。


「大虫の奴、上手くやったか…」


 柚子の死を確かめなければならない。


 自雷矢は大虫の跡を追おうと忍びたちの亡骸を跨いだ。


「ぐあっ!?」


 自雷矢の口から突然、切迫したうめきが洩れる。


 悶絶し、倒れ込む。


 万力のごとき圧力で喉笛を絞められていた。


 しかし、自雷矢に敵の姿は見えない。


 自雷矢は己の首へと手を伸ばした。

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