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あまりの過密ぶりに、九本の刀を生やしたひとつの塊のように見えた。
全ての刃は突進してくる骸に向いている。
骸は怯まない。
前方の九人を無視して猛然と進んだ。
荷車の自雷矢しか眼に入っていない。
骸は勢いのままに九人の忍びの塊へと激しくぶつかった。
骸が止まった。
忍びたちは激突の衝撃をそれぞれの身体で支え合い、分散することで巧みに殺した。
なおかつ、全ての刀は骸の急所に突き込まれている。
眉間、両眼、喉、心臓、肺、両の脇腹、そして股間。
必殺の手応えに忍びたちの表情が、わずかに緩んだ。
「ぐおおお………」
骸が声を洩らした。
それが苦悶の声でないことに気づいた忍びたちの顔色が一気に青ざめた。
「ぐおおおーーーっ!!」
骸が再び吼えた。
凄まじい怒号だった。
左腕を失い、今まさに九箇所の急所を突かれている者の声ではない。
骸が前進し始めた。
当然、刃はさらに深々と身体へと入っていくが骸は意に介さない。




