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肩口の辺りも不自然にならぬように造り物を工夫した。
常日頃からその姿勢で過ごし、そうすることで身体もまた、どんどんと形を変えていった。
敵が偽の頭に欺かれているうちに反撃するなり、逃走することが出来る。
そうやって大虫は生き抜いてきた。
胸に隠した素顔に大虫は今、ぐっしょりと汗をかいていた。
普段から日にあたることもない青白くなった顔だ。
特別、醜い面相ではない。
むしろ整っていると言えた。
しかし、それがかえって不気味さを増すのだった。
(柚子にとどめを刺さねば)
そう思いながら、何か嫌な予感がして前へ進めない。
「せっかく、一度は見逃してやったのに」
女の声がした。
大虫は、ぎょっとなった。
声は以前聞いた冥のものだった。
柚子の手から冥の首が、ころりと地面に落ちた。
首は何度か転がると大虫の方に顔を向けて止まった。
猫科の獣を思わせる大きな瞳が大虫の胸元をにらんだ。




