63/180
63
「いい顔になったね」
冥が柚子を見て、にやりと笑った。
「あたしと骸が最後まで手伝ってやるよ。なあ、骸」
骸が大きく頷いた。
柚子は恐ろしい容貌を持った骸が自分を見るときは存外、優しい眼をしていることに気づいた。
命を助けられてから長い時を共にしたせいで見慣れてしまったのか、何やらかわいげすら感じ始めている。
(何故かしら…)
柚子自身が不思議であった。
とりあえず、三人の揉め事は終わった。
それから三人は次々と信虎の荷を襲撃した。
三人は、と言っても実質、護衛を倒し荷を奪い壊し捨てる等の作業は全て骸が引き受けていたのだが。
柚子は最初のうちこそ、骸によって以前の家臣たちが殺されるのに心が痛んだが、次第にそれにも慣れた。
考えてみれば義時への恩を忘れ、信虎についた者たちである。
(死んで当然)
柚子はそう思った。
「来たよ」
冥の声に、柚子は草むらに隠れる今へと引き戻された。
山道を進んでくる一団の灯りが見える。




