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小諸領、否、今は鬼道領の山道をその一隊は進んでいた。
十台の荷車を体格の良い男たちが引き、周りを三十人ほどの侍がしっかりと護衛している。
鬼道信虎の配下の侍たちである。
買い付けた鉄砲を運ぶ途中だった。
陽が落ちてからかなりの時が経っており、辺りは闇に覆われていた。
侍たちの持つ松明の灯りが険しい山道を、かろうじて照らしている。
夜を徹して進まねばならぬほど彼らは焦っていた。
それというのも、このところ鬼道信虎に協力する複数の商人が殺され、軍備を整えるための物資が次々と襲われるという事件が多発していたからだ。
小諸城改め、鬼道城に着くまで安心できないのだった。
比較的、小規模の隊が襲われていたが、それでも何度も続けばなかなか馬鹿にならない痛手となる。
事実、信虎が物資を守りきれない頼りない部下たちに怒りを露にし始めているとの噂が広まっていた。
これ以上の失敗は許されない。




