表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冥伝  作者: もんじろう
55/180

55

 住職の期待には応えられないのだ。


「つらくなったら、いつでもここへ帰ってきなさい。何事にも遅いということはないのじゃから」


 柚子はそのまま、冥と骸と共に寺を後にしたのだった。


 住職の最後の言葉が、柚子の頭の中で何度も繰り返された。


(必ず仇を討つと誓ったのに…)


 自分が情けなかった。


 勝蔵の死体に必死にすがる新郎新婦の姿が自分と今は亡き弟、武丸のように見え、父と母を失った哀しみが大波の如く押し寄せてきたのだ。


 仇を討つことで、あの二人に同じつらさを味あわせたかと思うと胸がずきずきと痛んだ。


「こんなことぐらいで泣くんじゃないよ」


 泣きやまぬ柚子に冥が冷たい声を浴びせた。


「こっちはお前の願いを叶えるために付き合ってやってるんだよ」


 この言葉は不可解であった。


 以前、柚子に助力する理由を訊かれた際、冥は自分自身も鬼道信虎に恨みがあると答えた。


 松葉屋を討つことは信虎に痛手を与える。


 冥にとっても無関係ではないはずだが…。


 泣き崩れる柚子は、そのことに気づかない。


「いつまでも泣いてないで、ほら、立ちな!」


 そう言って冥が柚子に近づこうとすると、その行く手を遮る者が居た。


 骸だ。


 巨体の後ろに柚子を隠し、冥から守ろうとしている。


「はあ?」


 冥の表情が曇った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ