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冥伝  作者: もんじろう
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5

「裏切り者っ!」


 柚子が伝兵衛を罵った。


 笠を脱ぎ、顔を露にする。


 弟の武丸と双子のようによく似た顔だちであった。


 武丸よりもやや年長のため、(つぼみ)の開き始める花のごとき可憐さを持っている。


 柚子は美しかった。


 その美しい顔も今は憎しみに歪んでいる。


「おお、柚子姫様。相変わらずお美しい」


 柚子の顔を見て、伝兵衛の瞳に怪しい色が浮いた。


 ぺろりと唇を舐める。


「しらじらしいことを…父上への恩を忘れてぬけぬけと」


「下克上は!」


 伝兵衛は声を強めた。


「戦国の世では当たり前。お父上の最後はお気の毒。されど、それはそれ、これはこれ。今のわしの主君は鬼道信虎(きどうのぶとら)様」


「鬼道信虎」の名を聞いた柚子の顔が、さらに激しい怒りに歪んだ。


「信虎め!」


 柚子が言った。


 柚子と武丸の父、小諸義時(こもろよしとき)を謀反によって討った小諸家家老、鬼道信虎こそが二人にとっての仇であった。


 武丸は無言で刀を構え、姉を庇いながら周りを窺っている。


 武丸の両足はガタガタと震えていた。

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