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仲間を助けるべく、大男に迫る。
大男は黙って彼らの接近を許しはしなかった。
吊るしあげた侍たちを新手に向けて投げつけた。
勢いよく飛んだ、手首を折られた二人の侍は迫ってくる侍たちにぶち当たり、転倒させた。
激しく衝突した侍たちは誰一人、立ち上がれず、じたばたともがいた。
大男の巨体が前へと飛んだ。
大広間中に侍たちの絶叫が響く。
大男の着地先が他ならぬ彼らの真上だったからだ。
ほんの短い間に八人の侍は、残り一人となった。
最後の一人は大男に比べれば小さいが、それは相手が異常に大きいだけで、勝蔵からすれば充分に大きい男だった。
仲間が倒されるのを見ても、この髭面の侍は逃げださなかった。
怯えるよりも、むしろ興奮で顔が紅潮していた。
この侍、名を猪熊大五郎という。
諸国を旅し、仕官先を探す武芸者であった。
元々は百姓の子であったが家出同然に旅へと出て、これといった師にもつかず我流で剣を磨いた。




