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侍たちは戸惑った。
刀に当然付くであろう血が付いていない。
所々、切り裂かれた黒布の合間から筋肉質な男の巨体が見えるのみ。
黒布の下から太い両腕が突如として飛び出したのは、そのときであった。
腕にはぐるぐると白い包帯が巻かれており、地肌はほとんど隠されている。
野太い両手は二人の侍の胸ぐらを掴んだ。
驚く隙も与えず、凄まじい怪力で侍同士を引き寄せる。
お互いの頭が激しくぶつかり合って、二人の侍は昏倒した。
残りの二人の侍が再び大男に攻撃しようと構えたが、もう遅かった。
大男の両手が二人の手首を掴んでいたのだ。
「ぎゃっ!」
「うぐっ!」
侍が二人、同時に叫んだ。
刀が手から落ちる。
一瞬にして手首を粉砕されていた。
大男は手を離さず、まるで重さがないように軽々と侍たちを持ち上げた。
二人の足が畳を離れ、吊り上げられる。
侍たちは戦意を失い、苦痛のうめきを洩らした。
それを見た残りの侍四人のうち、三人が動いた。




