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義時が鬼道信虎に討たれた後は、信虎とも良い関係を築いてきた勝蔵だった。
信虎から義時の一門は全員殺したと聞いていた勝蔵は、柚子も当然、死んだものと思っていた。
しかし、目前に立つ娘は間違いないなく小諸義時の愛娘、柚子である。
「そんな馬鹿な…」
呟く勝蔵に柚子の燃えるような怒りの視線が突き刺さった。
「松葉屋」
柚子が口を開いた。
その声は低く、微かに震えている。
「よくも父上を裏切ったな」
勝蔵の背筋が凍った。
勝蔵は柚子の言う通り、義時を裏切っていた。
恩義よりも利を取ったのだ。
戦に長け、領地を広げ、軍備を増強していく信虎に従ったほうが得だと考えた。
義時を討つための軍資金を信虎に用意したのは勝蔵だ。
全ては商い。
(商人が利に走って何が悪いか)
ましてや世は戦国である。
「誤解でございます! 柚子姫様、私は何も…」
勝蔵は嘘をついた。
時間を稼ぐのが狙いだ。




