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大きな音に驚き、全員が開いた襖側を見た。
先ほどまで騒がしかった室内が水を打ったように静まりかえっている。
三人の侵入者が立っていた。
三人の中央に立つ人物が最も人々の眼を引いた。
恐ろしく大きな身体をしているのだ。
頭が天井についてしまうのではないかという巨体だ。
大きな黒い布をすっぽりと被っているため、顔や身体は外から窺うことは出来ない。
黒布の頭部を隠した部分に穴が二つ空いている。
中の人物はそこから外を見ているようだ。
血走った瞳が穴から覗いている。
その右側に娘が立っていた。
粗末な着物を着ている。
地味な出で立ちと反して、その面は見た者をはっとさせるほどの美しさを有していた。
口を一文字に結び、瞬きもせず、じっと一点を見つめている。
娘がにらんでいるのは新郎新婦のそばに居る勝蔵の顔だ。
大広間に居る人々の中で娘が何者か知る者は、まさにその勝蔵のみであった。
ただ、あまりの驚きで勝蔵は気づいていない。




