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柚子が目の前で弟、武丸を殺害されてから十日が経った。
小諸城下にある商人、松葉屋の屋敷では息子の吉蔵の祝言が粛々と進められていた。
大広間の上座に鎮座する大柄な新郎と、その隣にちょこんと座ったかわいらしい新婦の笑顔に、参列した三十人ほどの人々も自然と幸せな気持ちになった。
夜のとばりが屋敷を覆う頃には宴もたけなわであった。
似合いの二人を満足げに慈愛の目で見つめる松葉屋の主人、勝蔵のそばに一人の男が近づいた。
番頭の与一である。
与一は勝蔵に耳打ちした。
「なに!?」
息子とよく似た大柄な身体が、びくりと震えた。
顔色が青ざめている。
勝蔵も与一に耳打ちを返した。
「先生たちをお呼び」
勝蔵の言葉に与一は頷いた。
大広間から出ていく。
残された勝蔵は、何とか平静を取り戻そうとしたが落ち着かない。
周りの人々は新郎新婦を筆頭に、勝蔵の変化には気づかない。
それぞれ談笑している。
大広間の襖が突然、勢いよく開いた。




