36/180
36
雲次は骸の死体を跨ぎ、本堂に足を踏み入れた。
このとき、雲次は骸の身体から血の匂いがほとんどしないことに違和感を覚えた。
しかし、骸が死んでいることに間違いはないと、そのまま本堂の短い階段を上がり戸をゆっくりと開けた。
雲次の眼前に童女の顔があった。
「げぇ!!」
思わず雲次は大声をあげた。
全く気配が無かったのだから無理もない。
雲次は後方へ跳んだ。
骸の死体のそばに戻った形になる。
「来たね」
童女、すなわち冥が言った。
落ち着いている。
「柚子を殺しに来たんだろ?」
「………」
雲次は黙っている。
意表をつかれ、唖然としていた。
軽く見ていた子供にあれほどまでの接近を許し、自尊心が傷つけられた。
「初めて見る顔だね。あのときのちびの仲間かい?」
大虫のことを言っているようだ。
子供が大人をちび呼ばわりとは。
雲次は怒りを覚えた。
冥が外へと出てくる。
態度や声はともかく、外見は子供にしか見えない。
雲次は考えた。




