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「ううう…」
骸が、うめいた。
「そう、それだ! 鬼道信虎を一人で殺せるのかい?」
骸と冥は話すことが出来ると柚子は気づいた。
(この二人は何者なのか?)
柚子は押し黙った。
その様子を見た冥は再び渋い顔になった。
まるで大人の女の顔だ。
「あ。そうだよ、あたしたちも鬼道何とかに恨みがあるのさ」
(恨む相手の名を忘れる者が居るかしら?)
疑念は晴れない。
しかし、嘘だとして嘘をつく意味が分からない。
「仇を討つ気があるなら、あたしと骸が力を貸すよ」
「うう…」
骸が、こくりと頷く。
あまりに不自然な申し出。
冥はともかく、骸は伝兵衛とその手下を瞬殺するほどの力を持っている。
鬼道信虎に恨みがあるなら、二人だけで実行すればいい。
わざわざ、足手まといになる柚子を仲間に入れる理由があるだろうか?
「どうだい? いっしょにやるかい?」
冥が言った。
「はい」
柚子は気づくと答えていた。
何故か?




