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若侍も顔から血の気が失せた。
唇を噛み締めている。
無理もなかった。
先ほどまでいっしょに居た仲間のあまりにも突然の死は受け入れがたいものがある。
しかも左門と別れてから、たいした時は過ぎていないのだから。
左門はなかなかの剣の腕前だった。
よもや、このようなことになろうとは。
右京がゆっくりと腰の刀を抜き、上段に構えた。
(何としてもお二人をお守りせねば)
決死の覚悟であった。
無言だった頭巾の男が右京の構えに反応した。
右手を上げ、拳を顔の前に突きだす。
(?)
右京は男の胸の厚みが不自然なことに気付いた。
乳房ではない。
身体の胸板の真ん中だけが膨らんでいる。
いったいこれは何なのか?
右京が考える間も与えず、男の右手が動いた。
「おおっ」
右京がうめいた。
これが右京の今生で最後の言葉になった。
右京の頭がころりと地面に落ちた。
一瞬の出来事だった。
残された二人は息を飲んだ。
二人には何が起こったのか、まるで分からなかった。
右京が倒れた。