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真夜中にやって来た三人組を住職は何も言わずに泊めた。
小さな寺ゆえ、住職の他には誰も居ない。
「お連れの二人は…」
住職の声は本堂によく通った。
「どうやら本当に外で眠られたようじゃな」
朝と昼の食事を持ってきたときも、住職は柚子に何も訊かなかった。
これが初めてのまともな会話と言えた。
「………」
「朝、庭に出たら大男が立っておるから驚いて死にそうになったわい」
住職が笑った。
「………」
「あの男はひどい怪我をしておるように見えるが? 平気なのかのう?」
「………」
「おまけに飯もいらんと言うのじゃ。でっかいなりして少食とは。まあ、そっちはともかく子供のほうが心配じゃよ。腹が減るじゃろうに」
「………」
「おお、すまん、すまん。何やらわしばかり喋っておるのう。先を急がぬ旅なら、ゆっくりしていくがよかろう。わしは一向に構わんでな」
住職が立ち上がった。
「では」




