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更に武丸の死、伝兵衛になぶられかけた屈辱が柚子を変化させた。
(奴らを倒す)
以前の柚子ならば、決して見せなかった憎悪の形相が浮かんでいた。
「もし」
古びた寺の本堂に座り、虚空に憎き者たちの顔を思い出していた柚子に声をかけた者が居る。
柚子が我に返り振り向くと寺の住職が立っていた。
にこにこと微笑み、柚子のそばに腰を下ろす。
住職は七十を越えた老齢であったが、その動作はしっかりとして全身から生気が満ち満ちていた。
相対する人を安心させる不思議な雰囲気をまとっている。
住職に話しかけられると、復讐に凝り固まっていた柚子の気持ちがほんの少しだけ軽くなるような感覚がある。
痩せて、柚子とさして変わらぬ体格の住職が慈愛に溢れた眼差しを向けてくる。
柚子は目を逸らした。
自分の中にある憎しみを見抜かれるのが怖かったのだ。
柚子が冥と骸に救われた夜から半日が経っていた。
今は昼過ぎである。




