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三年もすると信虎は小諸家にとって、無くてはならない者となっていた。
義時は信虎を信用した。
家老の要職を与え、実の兄弟の如く接した。
柚子は出会いのときこそ信虎を恐れたが年齢を重ねるにつれ、次第に彼に感じていた恐怖を忘れていった。
あれは勘違いだったとすら思うようになった。
何より信虎は小諸家のために尽力している。
父も信虎を頼っている。
(私が子供だったから怖かっただけ)
それで納得した。
柚子が十四になると信虎が諸国放浪のときより連れていた息子、信竜との縁談が噂されるほど、義時と信虎の関係は良好だった。
信虎に似ず、がっしりとした武人らしい体格と爽やかな風貌の信竜を見かけるたび、柚子の胸は乙女らしい恥じらいに高鳴るのだった。
(私はあの方と結ばれるのかしら?)
柚子は信竜に好意を持ち始めていた。
信竜の妻になる。
そして子を産み育てる。
そんな未来さえ夢見るようになった矢先。




