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「あの化け物は何なんだ? いきなり現れやがって…。それに後から出てきた子供。俺が死んでないことに気付いていたのか? 何故、見逃した?」
「大虫の兄貴」
ぶつぶつと呟く大虫に雲次が声をかけた。
「何だ?」
「これからどうします? 俺は兄貴と合流しろとだけ」
「どうするも何も…」
大虫の声が沈んだ。
「柚子姫を殺し損ねちまったんだ。帰って、頭領に報告するしかねえだろう」
「………」
「雲次」
「はい」
「手下は連れてきたか?」
「いいえ」
「そうか…。まだ追いかければ間に合うかもしれねえが仕方ない。一旦、戻るぞ」
「いいんですか?」
「ああ、仕事を失敗した上に敵の後もつけなかったとなると、俺は頭領に殺されるかもな」
大虫の声は震えていた。
その声は大虫の異様に膨らんだ胸のこぶから聞こえてくる。
「それでも頭領に報せるのが先だ。あの化け物たちは危ない」
大虫は身体を震わせた。
足元に落ちた自分の首を拾い上げる。
胸のこぶの前に持つ。




