20/180
20
骸が唸った。
「何だい。お前、怒ってるのかい? うふふ、冗談だよ」
冥が笑った。
「好きにしなよ」
冥の許しを得た骸が草むらから三人の亡骸を持ち上げた。
片手で武丸、片手で右京と左門を持っている。
「さあ、行くよ」
冥が言った。
骸はその場を後にした。
時が過ぎた。
暗闇をこちらへやって来る、ひとつの影。
影は伝兵衛の死体のそばで歩みを止めた。
背の高い男だ。
痩せている。
四肢が常人より、ひどく長い。
身を屈め四つん這いで辺りを窺う姿は、まるで昆虫か蜘蛛のようだ。
顔が小さい。
大虫と同じ忍び装束であった。
痩せ男の細い眼が伝兵衛の死体を確かめた。
鼻をひくひくとさせている。
次に痩せ男は大虫の死体へと近寄った。
細い眼が、きらりと光る。
「大虫の兄貴」
囁いた。
「兄貴」
もう一度、言った。
何も起こらない。
「俺です、雲次です」
雲次の名を聞いた途端、大虫の死体がぴくりと動いた。
そして。




