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伝兵衛に比べれば骸は不快ではない。
「やめなっ!」
冥が大声を出した。
骸の脚を蹴る。
冥が蹴ったところで骸はびくともしないだろう。
しかし、骸はぴたりと動きを止めた。
恨めしそうに冥を窺う。
「何だい、その眼は? お前、自分の立場が分かってないようだね。あたしが上でお前は下」
「ううう…」
骸が唸った。
「あの…」
柚子の言葉で冥はやや落ち着きを取り戻した。
「何故、あんたを助けたかって? そうだね…ここじゃあ何だから、場所を変えようじゃないか。骸、行くよ!」
冥の言葉で骸がゆっくりと柚子に手を伸ばした。
軽々と柚子を持ち上げ、己の右肩に乗せた。
続いて冥を左肩に乗せる。
冥は座らず、骸の肩に器用に立っていた。
骸がその場を去ろうとすると「待って」
柚子が言った。
「武丸と右京と左門を」
「連れていくのかい!?」
冥は露骨に嫌がった。
「はい。弔いをしてあげたくて」
「はっ。意味ないね。そうだろ、骸?」