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「そんなことは許されません」
武丸の声は震えた。
「お前の意見は訊いてないよ。あたしはこいつに天下を獲らせて、こいつの魂をいただく。お前の魂はもうあたしの物だからね。目一杯、手伝ってもらうよ」
「本当に天下を獲れるのだろうな?」
信虎が訊いた。
「心配ない。今度は武丸も居るからね。そんなに時間はかからないよ」
「よし。お前の力を見せてもらおう」
「まったく…偉そうだねぇ。まあいい。お前たち二人には新しい身体をやるよ。思う存分暴れて天下を獲るんだね」
女が微笑んだ。
大きな瞳が、きらきらと輝く。
武丸は黙っていた。
言葉が出なかった。
激しい後悔と絶望が武丸の全身を巨大な爪のように、がっしりと掴んでいた。
以前の武丸なら、ここで諦めていただろう。
しかし、冥の力を借りてでも一度は復讐を果たしたという自信が。
死してなお、己を反省せず野望を成し遂げようとする信虎への義憤が。
武丸をどん底から立ち上がらせるのだった。
(させるものか! この男に天下をとらせるなど…許すものか! 身勝手な野望を! この武丸が信虎をもう一度殺してみせる! 今度こそ、魂ごと遥か黄泉の彼方へ叩き落としてやる!)
武丸の双眸は不退転の決意に激しく燃え上がる。
その武丸の顔をじっと見つめる女。
「お前たちは本当に面白いね。これからもそうやって、あたしを楽しませておくれよ」
武丸と信虎を交互に眺め、満足げに口元をほころばせるのだった。
おわり
最後まで読んでいただき、ホントにありがとうございます(T0T)
大感謝ですm(_ _)m
私の「異戦国」シリーズ最初の作品でございます|д゜)ジー
実は当初は武丸が絶望するところで終わりだったのですが、読者様方から「骸がかわいい」という意見をいただきまして、書いてるうちに「武丸、頑張ってるな」「あれ? 武丸が強くなってきてる」「これは武丸、諦めないな」となって違う展開に( ゜д゜)ハッ!
そのおかげで続編に繋がる結果になっておりまする(*^^*)
「冥伝」との直接の関係はまだありませんが、続きます「異戦国」シリーズは「虹丸」(゜д゜)
さて、どうなりますことか(≧▽≦)